『Dolphin Street』
そこは、日々JAZZを愛する人たちが集う場所であり、また日ごろの疲れを話すことによって、好い音楽を聴きながら癒す、そんな空間。
Dolphin Street
   another ask?

センセ、交代」
ピザが来たころ、運んできたルカと入れ替わるようにしてに声を掛けたのは、カウンターの席から戻ってきただった。
「やっと戻ってきたか」
と、跡部が呆れたようにを見やって隣に座るように腕を動かすが、そんなのに従うほど従順ではない彼はあえて跡部から一番離れた席に座る。
それを見て一瞬不機嫌な表情を隠さなかった跡部だったけれど、それ以上は何も言わなかった。
そんな跡部の様子を我感知せずとばかりに、さっきまでは無かったテーブルの上のピザを見て嬉しそうに
「お、ピザじゃん。うまそー」
とさっさと小皿を取り、食べようとするのを横目で見ていた跡部が
、先生に礼くらい言ったらどうだ」
と注意する。
これは自分たちが頼んだのではなく、この人のオゴリだから。
それを察したのか、食べる寸前でその手が止まった彼がの方を向き直って
「これ、先生のオゴリ?」
と、確認を取って頷いたに素直に小さく頭を下げた。
「ってことは、珈琲もですね。ありがとうございます」
そう言った直後、止まっていた手の動きを再開させるとそのまま一口パクリと食べた。
「やっぱここのピザ美味しいです」
などと言うその表情はまるで子供のように無邪気で幸せそうで、そんな弟を横目に見て半ば無視された形の跡部が不機嫌そうなそれでいて小さ声で彼に言った。
「テメェ」
と。


そんな反目しあう二人に巻き込まれまいと、と言っても踏み込めないのだが、しかし一歩も二歩も離れたところから見ている忍足とにしてれば完全に跡部の一人相撲にしか見えない。
それでも尚、あの跡部がなんだかんだとこの弟にだけは甘くなるというか、なんというか。
不器用ながらも構おうとしている姿は、それはそれでなんだか微笑ましい。
とは言え、こんなことを本人達に言うと二人共絶対に怒るから言わないだけで。
そんな跡部の弱った様子を二人で見た後、フトは忍足と視線が絡まる。
視線だけで、謝られた。
少なくとも忍足にはそう感じ取れた。そして事態は進んでいく。
「じゃ、俺カウンターの方に戻るね」
と言って席を立ち、さっきまでのが座っていたカウンターの椅子の方へと戻ってしまった。
その後ろから、声を掛けようとした忍足はグッとその声を寸でで止める。
何故ならさっきの雑談でも、彼はほとんど自分に話を振らなかったから。
おまけに視線だけだったとしても、先に謝られたら何も言われへんやんか。
気分は落ち込んでいたけれど、表情は変わってないと自分では思う。
そしてその視線は彼を、の後ろ姿を追いかけていた。
無意識に。
そんな視線を感じているのかいないのか、カウンターの席に戻ったはカウンターの向こうに立つ淡い桃色というか淡紫色というか、兎角不思議な色をした長い髪のアジアン風なともアラビア風なとも取れる不思議な格好をした少女に何かを頼んだ。
「はい」
と、透き通る鈴のような微かな声がここまで届き、カウンターの向こうで笑顔になるその淡桃色の髪の少女を見て不思議に思う。
なんであんな不思議な格好……まるで、あのカイトと同じような。
もしかして
「あの子も……もしかしてアレか?」
そう思ったら忍足の口は無意識にピザを食べていたに話し掛けていた。
「あの子……。あぁ、もしかして巡音ルカですか」
と、話し掛けられたはピザを食べる手を止めて珈琲カップに手を伸ばしながら忍足の質問に答えた。
「ですよ。彼女もカイトと同じボーカロイドです。そんでもって、その調整したのがセンセ。さっき直接聞いたんで間違いないです。それにしても

、英語ライブラリの発音よくあそこまで調整したよなぁ。すげぇわ」
と素直な感想を答えてそのまま珈琲を飲むその横で憮然となる忍足に、珈琲をテーブルに戻したがそのまま忍足の方に顔を向けて、聞いた。
「気に入らなさそうですね、忍足先輩は」
「だ、誰が気に入らんて」
内心を見透かしたかのようなの言葉と何よりそのニヤニヤとした楽しんでいるかのような表情に、明らかに忍足の態度に動揺が走る。
その様子を黙ってみていた跡部がに注意を入れた。
、てめぇ先輩をからかうんじゃネェよ」




怒涛のような時間だった。
さんとさんの会話というか、一方的にさんが話しているような、そんな時間だった。
しかも、ライブラリや辞書には無い言葉が次々と出てきて、半分以上混乱がきたところで理解しようとするのを辞めてしまった。
これ以上理解しようとすると中の回線がオーバーヒートを起こすと警告が灯ったからだけれども。
途中ルカにさんが話し掛けているような気がしたけれど、自分の中の処理に手一杯で上手く聞き取れなかった。
そして混乱している間に、いつの間にかさんが居なくなり、代わりに隣に座っていたのはマスターだった。
とはいえ、さっきの混乱がまだ続いていて復旧までに時間が掛っていて話しをするどころかルカに助けを求めるのだって……
結論。
ヒトって、凄いです。
さん。俺、今度の演奏はもしかしたら、というか、メールでも書いたとおり仕事が入ってまして」
「あ、はい。了解しました。というか、俺ももしかしたら演奏に入れない可能性が出てきまして。実はもう榊先生に引継をお願いしてるんです。連絡が遅れてすみません」
申し訳無さそうに話す彼に、先日チラリと聞いた話をは話す。
「良かった。もしかしたら休むのは俺だけかと思ってて」
と、話を聞いた後明らかに安堵の表情を見せる
「俺もです。しかも話を貰った以上は、最後まで参加の調整つけたかったんですけどねー……中々」
と困った表情で答えた。
その時、微かに響いた電子音に「失礼」と言っては、着ていたジャケットから携帯電話を取り出して何の操作もせずに閉じたあと、申し訳無さそうに
「そろそろ」
と言うと、椅子から立ち上がりやマスターに挨拶をする。
帰るのだろうとは思ったし、もイヤな顔はしない。
逆に笑顔で
「はい。今夜は楽しかったです。それと、お忙しいのに無理言ってすみませんでした」
と申し訳無さそうにが言うと、彼は慌てて否定した。
「いえいえ。楽しかったですよ」
「そう言っていただけると助かります。それではお休みなさい」
「はい。それでは」
小さく頭を動かしてサヨナラと告げると、彼はカウンターから去っていった。
カラン……
しばらくして響く扉の鉄鈴の音。
『お兄さん、大丈夫?』
と、注文を取ったり料理を運んだりしながら忙しく動いているルカが通信を飛ばしてきた。
『あ、うん。平気』
表情を変えずに通信だけで安心させるような声で返すと、ルカは半信半疑な表情で納得してないんだろうなぁという声で返信を返してきた。
『ならいいけれど』
そんなやり取りがあって、しばらくすると聞こえてきたのはマスターの…・・・
「……ルカ、カイトどうしたの?」
心配そうな声だった。
「う〜ん、多分オーバーヒート気味ではないでしょうか。さっきのあの人の話で」
と、ルカが食器の片付けをしながら視線だけで奥の席に座るを指すと理解した彼が
「なるほど」
と言うのが理解できた。
そして、誰かが……
、隣いいかな?」
と、これまた聞きなれない言葉と声が聞こえた。
『誰?』
と不思議に思ってルカに通信を飛ばすと、彼女から『わからない』という返信が返ってくる。
「こんばんはイギリスさん。良いですけど一体何の用ですか。というか、フランスさんは?」
と、不信感を隠していないマスターの声を珍しいと思いつつ、しかし未だにシステムの半分は復旧に当たっていて、意識が追いついていない。
「フランスなら奥で一人で飲んでる。あんなことをヤラカシタからな。反省させてるんだ。それにしてもお前、音楽方面でも食っていけるんじゃないの

か?」
と、椅子に座りながら紅茶を頼んだ男イギリスはづけづけとそう言ってきた。
そんな自分のことよりも気になったのが、一体フランスさんは何をやったのか。ということだ。
自分たちが居ない間に何かが起こったのだろう。それは分かるのだけれど、一体何が?
ということは、戻ってきたときに感じた違和感はきっとソレだと確信はするものの、わざわざイギリスの前で納得するわけにもいかないので、は素直に話題を出したイギリスに事の真相を聞いた。
「あんなこと?」
「あぁ。あんなことだ。それにしてもお前、今度俺んところの……ってそうか。お前の立場は微妙だったな。すまん」
と一人納得しながら話すイギリスは、ギシリと椅子を鳴らせての方を向くと
「今度、俺んところで演奏しないか。各国の奴らにも聞かせたい」
と。
アトガキ
はい。別の意味でのスカウト入りました。
2023/08/07 script変更
2009/04/27
管理人 芥屋 芥