『Dolphin Street』
そこは、日々JAZZを愛する人たちが集う場所であり、また日ごろの疲れを話すことによって、好い音楽を聴きながら癒す、そんな空間。
Dolphin Street
   車内小話

「僕は・・・あの人・・・あまり・・・好きじゃ・・・ないです」
帰りの車の中、助手席に座ったカイトが呟くように言う。
「あの人って・・・か・・・」
その名をが言うと、カイトが少し悔しそうな表情で下を向く。
「・・・まぁ・・・はっきりしてるからなぁ・・・アイツは」
「マスターは・・・あの人のこと、庇うんですか」
「カイト、それは違う。
 別に庇うとかじゃなくて・・・あいつの性格を、俺は分かってるから・・・俺としては、何も言えない・・・ってだけで・・・
 そうだ。帰りにアイス、食べるか?」
思い切ってが提案してみるが、カイトの表情は暗いまま。
「まぁ・・・お前の言いたいことは分かるけど・・・でも、アイツの言ってることも、正しいし。
 ちょっと、言い方がキツイけど・・・カイトは、アイツの言葉を聞いて、イヤだと思った?」
その問いに、首が縦にゆっくりと動く。
それを横目で見て、が彼に気付かれない程の小さなため息を吐いた。
「まぁ・・・には今度会ったら、言っておくから」
そう言うと、カイトの首が再び縦に動く。
その様子を見て、やはり小さくはため息を吐いた。
アイツの言う事も、ある意味・・・『正論』だけど・・・
でもそれで、カイトが悲しいと思ったのなら、それはの配慮が足りないのは、わかる。
だけど、それは彼の性格でもあるし、でも、それを分かった上で付き合っている自分達はまぁ・・・いいけれど。
だと言って、初めて会った彼にあんなことを言うもどうかと思うけど・・・
彼の、初対面の相手にする言動としては、珍しく配慮が足らなかったとは、思う。
それをそのまま自分がに言うと、また、それはそれで、彼と同じことになってしまうわけで。
難しいなぁ・・・
は考える。
そして、尚もカイトの表情は暗いままだ。
「大丈夫か?」
その問いに、静かに頷くそんなカイトを見て、は思う。
多分、誰よりも頑固なのは、なんとなくだけれど、分かっている。
普段は弱くてオロオロしてて頼りなくて兄弟のいい遊び相手だったりする彼だが、それでも、底辺にある意思の堅さは、きっとどのボーカロイドより

も強いとは思っていたりする。
なんとなく・・・なんだけどな。
そんなことを思いながら、は信号が青から黄色に変わったところで、アクセルから足を外し、クラッチを左足で踏んでギアを換えて車を停止させ

ると、そのまま体を横に向けて
「顔、上げて」
というと、思いきりよくカイトが顔を上げて・・・そのまま、固まった。
「・・・っん」
 
 
見開いたその目は、青と周りの闇が混じったような、夜の空の色をしている。
「ほら、止まった」
そう言ったの表情は、『してやったり』の悪戯っ子の顔をしている。
そして、追いつかないのが、カイトの方だ。
「マ・・・マ・・・マスタァー?」
「止まったろ?涙」
そう言うの表情は、とても楽しそうで。
されたカイトの方が追いつかない。
 
 
 
確かに涙は止まったけど・・・でも・・・あんな方法で止めなくても!
しばらく顔が真っ赤になりながら口元を抑え呆然とするカイトに、が告げる。
「じゃ、アイス、食べに行こうな」
と言うと、帰路とは違う方向へ、ハンドルを切った。
アトガキ
車の中での,カイト救済小話。
カイトは、落とされてグシャグシャ泣きそうになってからがカワイイと思う。
2023/08/07 script変更
2008/04/19
管理人 芥屋 芥