『Dolphin Street』
そこは、日々JAZZを愛する人たちが集う場所であり、また日ごろの疲れを話すことによって、好い音楽を聴きながら癒す、そんな空間。
 
途中までは表と同じなので、割愛します。
Dolphin Street
   Finger Stick-over20

「こっちのほうが・・・甘いから・・・」
そう囁くように言うカイトに、この時点で疑問がわいた。
「お前・・・どうかしたのか?」
と。
「何がですか?」
指先を少しだけ口の中に含みながら、ハッキリと発音しつつ切り返す。
「何がって・・・だって、お前いつもはこんなワガママ言わないだろう?」
明らかに普段の『カイト』とは違う。
「だってアイス・・・マスターの買ってくれたものじゃないから・・・
 マスターは僕にとって、本当に大切な『人』だから・・・」
言い終わると、の手を握る力にグッと力を込め、そして、指の付け根まで一気に口に含んできて、指と指の間に舌を這わしてきた。
「ちょ・・・コラッ止めなさい」
言うが遅かったか、今度は中指まで!
「カイト!!」
が、ちょっと『洒落にならん』という気持ちを込めて、彼の名前を叫ぶ。
「コンビニ寄って買うから!それで機嫌直せ!!」
叫んだ。
だが、カイトは止めない。
「手を放せ。ギアが替えられない」
目の前の信号はもう既に黄色から赤に変わっていて、横断歩道から人が歩いてきている。
流石に五速で停止すれば、ギアも痛むし、何よりエンストをしてしまうかもしれない。
このオートマが全盛を誇る御時世に、エンストはちょっと・・・恥ずかしい。
「放せ」
少し声を低くして言うと、カイトがハッとした表情で口から手をやっと放してくれた。
 
 
「その残りのアイスは、自分で食べて」
と言うと、
「イヤです」
と返してくる。
「お前・・・」
「マスターの手、すごく・・・甘かった。
 だから、いやです」
なんて返してきたから、は黙ってハンドルを切った。
 
 
 
 
 
「あの・・・マスターここ・・・」
ここは、いつもの家じゃない。
そう思いながらも、カイトは前を歩くの後ろを付いて行く。
やがて一つの扉の前で立ち止まって、鍵を入れてドアを開けた。
「あの・・・マスター・・・?」
マスターの匂いが、微かにする・・・部屋。
六畳一間の、1kのマンション。
「今まで、俺以外のヤツを入れたことはないけど、ま・・・とりあえず、入って」
カチリと電気をマスターがつけ、そう促されて入ると、そこにあったのは、簡単なパイプベッドと、小さなテーブルだけ。
他はほとんど何も無い。
あの、いつもの家とは全く違う雰囲気がそこに漂っていて、だけど、確かにマスターの匂いがここにはある、そんな妙な感覚に襲われる部屋だった。
「マスター・・・あの・・・ここは?」
「独りになりたいときにたまに来る・・・昔の俺の家・・・かな。
 もうホトンド何も残してないけど。
 今日のお前、なんか変だから、それでちょっと・・・ね」
と言いつつ、コートをハンガーにかけて、適当に出っ張りに引っ掛けるとその足で台所に向かって水道の蛇口を捻って水を出した。
つまり、僕が『どこか変』になったから、悪い言い方をすれば、隔離した・・・ということ・・・らしい。
ということは、このままマスターは帰ってしまうのだろうか。
それだけは・・・イヤだ!
「ちょ!カイト!?」
が後ろから抱き付いてきたカイトに対して驚いた声で名前を呼ぶ。
「いやです・・・一人は・・・いやです・・・」
「カイト?
 ちょっと・・・お前何すん・・・っ?!」
甘いのは一瞬。
間近にあるのは、マスターの体。
たった、約三センチ程背が低いマスターの身体を引き寄せて、そのまま後ろから離れないように抱きすくめる。
「イヤです・・・独りは・・・もう・・・」
コワイ。
 
『在る』か『無い』かだけの世界の奥底で、何かが怖いと感じている。
メモリの底の、更に底の部分で、怖いと感じている自分(KAITO)が確かに存在している。
「俺はここにいるよ、カイト」
震える腕にがソッと触れて、静かに言う。
「・・・ん」
頷くようにして、この人の肩にソッと額と髪の毛が触れた途端、ビクッと明らかに体が震えた。
アレ?
もしかして僕・・・当てちゃった?
 
 
 
 
 
 
「誰にも言うなよ?」
「言いませんよ」
「お前口軽いからなぁ・・・どこまで・・・」
「ほんとですって!
 でも、マスター・・・ここ、ポイントなんですね」
「そこは・・・ちょっと色々あって・・・ね。
 ダイレクトに腰に響くところなんだ」
というと、カイトに背中を向けて座るがカイトに言う。
「シャツの上からでも、少しだけ出っ張ってるの分かる?」
ゆっくりと触れていくカイトが
「はい。何となく・・・
 マスター、これ傷あ・・・」
「まぁ、いいや。寝よう!」
カイトの言葉を遮るように言うと、立ち上がって電気を消してベッドに横になる。
「ちょっと・・・いつもより狭いですね」
暗闇の中、いつもより狭くて、硬いベッドの上で二人。
「我慢・・・ってお前?!」
壁に向かって横になっているマスターには、逃げ道はない。
だから、ちょっとだけ・・・
チュ・・・
と、微かに響く音に、ほんの少しだけ息が上がる。
なんだろう。
あの傷跡を見た直後から、心の中がザワザワする。
「やっぱり今日、変だぞ?カイト」
「それを言うなら、マスターもちょっと変ですよ?
 だって、こんな変になってる僕に、自分のことを教えるなんて・・・
 誘ってるんですか?」
「誰が・・・ってお前・・・何してんのかな?カイト君は」
「え?何って・・・シャツのボタン外してるんですけど・・・?」
「止めなさい」
「・・・いやです」
と言うと、カイトはスッと直接肌を撫でてきた。
「コラ」
「ねぇ・・・マスター」
「何?」
「・・・今だけ、今だけ、名前で呼んでもいいですか?」
ギシッと、ベッドが鳴ってカイトが身体を少し動かしたのがはっきりと分かる。
なぜなら、スッと身体を上から覆い被さるように抱きついてきたから。
「・・・いいよ」
一拍遅れて聞こえてきた、OKの言葉。
それがどれほど嬉しいか分かりますか?
「じゃ・・・その・・・えっと・・・・・・さん」
「・・・『さん』いらない」
「・・・・・・?」
自分で要望しておきながら、自分の声に照れてカイトの顔は真っ赤になる。
「や・・・やっぱりマスターの方が・・・」
「お前、自分で言っといて照れるなよ」
カイトの体の下で、顔も見ていないのに言い当てたが呆れる。
全く、なんなんだ一体・・・
「ほら。って、言ってみ?」
「・・・・・・・・・」
「泣きそうになりながら言うな。
 まぁいいや。呼びたいときに呼んでくれれば」
と言って、後ろにいるカイトを振り返り
「で、するの?」
ゆっくり聞く。
「・・・どうしたら・・・いいか・・・」
「お前なぁ・・・」
 
 
 
「大型犬に懐かれてる気分」
上向けになったが、思わずそんな感想を洩らした。
「やっぱり、僕・・・下手ですか?」
「そういう意味じゃなくて・・・なんていうか・・・もうちょっと色気が足らないっていうかね。
 そんな感じかな。照れないで、真面目に俺の名前呼んでみろ。それだけで随分違うぞ?
 な?カイト」
そう言うとが腕を伸ばして、カイトの手を掴むとそのまま口元に持って行って息を吹きかける。
急に変わったに、カイトの思考回路は追いつけなくなる。
マ・・・マ・・・マスタァァ?
「照れるな。ほら」
グイッと顔を上向かせてキスをされた。
その目には、はっきりと欲の色が映りこんでいて・・・
それに誘われるようにして、カイトは思考を完全に入れ替えた。
・・・」
囁くように、耳元で言う。
誘うように、促すように手を伸ばして、今度は彼を支配するように、自分から唇をあわせた。
息が熱い、いや、の体が熱い。
そして、僕の身体も熱い。
腕を何かを探すように彷徨うの腕を掴んで引き寄せて、その手の甲に唇を落す。
「・・・っん」
そんな行為一つで彼が感じてくれている。
それだけで、嬉しいと思う。
もう片方の手で、彼が反応した体の部分を触れるか触れないかの程度でスッと触れていくと、今度は体が跳ねた。
無意識なんだろうか、その目はきつく閉じられていて、さっき見た欲の色は見えないけれど、それでも、そこに『在る』ということがハッキリと分かる。
「・・・っあ」
抑えようとした声が、その唇から漏れて、その表情と絡まってとても色っぽい。
「目を・・・の目が見たい」
身体を少し上げて、額に掛る髪にスッと指を絡めながら言うと、ゆっくりと彼の目が開いていく。
その目を見て、カイトは確信した。
やっぱり・・・この人の目の色は・・・
「やっぱり、緑色をしているんですね」
と。
最初見た、瞳の色は薄い緑色だったから。
それ以来、その目の色を見たことはないけれど、でもどこかで確信があった。
「い・・・つもは・・・コンタクトで隠してるんだけどね」
そう言って、少し恥ずかしそうに笑う。
「そうですか」
カイトはそれ以上は聞くことなく、その目元に唇を落す。
「・・・ん」
スッとカイトが下肢に手をゆっくりと伸ばしていく。
抵抗するかと思ったけれど、その腕はほとんど動かずに、ただ、カイトのシャツを握っているだけ。
「少し、身体を浮かせて?」
カイトが囁くように言い、そしてそれに素直に従う彼に欲望が満ちた笑顔でカイトがスッと身体を上に上げて、胸の突起に吸い付いて
「ありがとう
と労うと、彼の口から声が漏れた。
「・・・っん」
 
 
 
 
「・・・マスター・・・好きです」
彼を駆り立てながら、耳元で囁くように言う。
こんな声音なんて、初めて出した。
「カイト・・・急に・・・不意打ち・・・するなっ」
途切れ途切れながら、それでもなんとか声を紡ぎだす。
まだ余裕がありそうで、少しだけ、ほんの少しだけムッとする。
何故ここでムッとしたのかはカイト自身にも分からなかった。
「ねぇマスター・・・今日だけ・・・僕だけのマスターでいてくれますか?」
それになんて答えたのかは、にも分からなかった。
 
 
 
息遣いが聞こえる。
「・・・ん」
横向きになったの背中を、カイトの指がゆっくりと動いている。
「ココ、やっぱり傷跡なんですね?マスター」
「・・・・・・ぅん」
夢見心地でが答えた後、ゆっくりとその体から力が抜けていった。
?」
さっきの影響で名前で呼びかけるカイトにも反応しない。
だから、こんなことも言える。
さっき自分の中で生まれた『もやもや』が、今、ハッキリと形になった。
「・・・おやすみなさいマスター
 でも、今度は・・・入れさせてくださいね?」
そう言うと、カイトはその傷跡に唇を落とした。
コノキズハ ボクノモノダカラ・・・
アトガキ
VOCALOID KAITO夢
カイトxマスター finger stick の更に指定年齢が上がった物・・・です

どっちも『天然さん』だから押しが弱ぇし、スイッチ入るの遅いけどやれば出来る子!(マテ
それにしても,青学主の背中の傷跡の『威力』って,絶大なのな・・・orz
2023/08/07 script変更
2008/02/27
管理人 芥屋 芥