『Dolphin Street』
そこは、日々JAZZを愛する人たちが集う場所であり、また日ごろの疲れを話すことによって、好い音楽を聴きながら癒す、そんな空間。
Dolphin Street
   in Halloween

時間が空くと大抵ここに来る。
不思議な店。
大通りから一歩離れた路地裏の。
更に右に左に曲がり角を曲がってようやく到着。
近くに駐車場もあるにはあるが、大体ここには歩いてくる。
仕事で忙しい時間を、歩きながら忘れるように。
扉を開けると、マスターのいつもの言葉が響く。
「いらっしゃい」

いつものカウンターの席について、いつものコーヒーを頼む。
やがて湯を沸かし始めたマスターが、グラスコップを磨きながらカウンターを挟んで目の前に立っていた。
そして、意を決したように声をかけてくる。
「あの・・・サン」
と。


カラン
という音をさせて、マスターが出入り口のドアのところに行って何かしている間に、店にあったギターを借りてシールドの準備をしていると、

マスター意外そうに「いらっしゃい」と言ったその方向へ顔を上げて視線を向けると、出入り口に背の低い男を前にして二人立っていた。
一人はスーツ姿の男だったが、もう一人は緑の米軍の中古ジャケットとジーンズ姿。
そしてその肩に少し大きめのバッグとリュックを背負っていて、恐らく今まで航空祭に行っていたのだろうことはには容易に想像がついた。

「榊先生と・・・?」
珍しい組み合わせの来店には少し驚いたらしく、アンプにシールドを挿そうとしたその手が止まる。
一瞬固まった場の雰囲気を動かしたのは、だった。
「さっき店の前で榊先生とバッタリ会っちゃって・・・」
 
 
 
 
 
 
 
榊先生がピアノの前にスッと座ると、先生がギターを軽く弾いてチューニングを始めた。
キュ・・・とペグを回す音が店の中に響く。
で、はというと、カメラバッグの中から一眼レフカメラと恐らく近距離用なのだろう短い方のレンズを取り出して、バッテリーの確認と後何枚撮れるかの、カードの容量チェックを行っていた。
それを見た
・・・歌ってくれる?」
と言って楽譜を渡しながらそう言った。
一瞬驚いた表情を見せただったけが、すぐに了解の意を示した。
「わっかりました」
と言って、マスターにマイクはどこかと聞く。
マスターはマスターで『そうなる』ことを予測していたかのように、ちゃっかりとマイクの準備もやっていて、直ぐにカウンターからマイクを取り出してに渡した。




 
今日はハロウィン直前の日曜日。
何かしたいなぁと思いつつも、当日は平日で、いつも通りの営業がある。
だから、今日だけは・・・
 
 
まさか運良く榊先生と君が来てくれるなんて、これは嬉しい偶然。
マスターの密かな企画。
だから早々と店の看板は
『Now Music』
それを、店のドアノブにひっそりと下げられたジャック・オ・ランタンが、少し楽しげに聞いていた。
アトガキ
記憶消すヤツ
2023/08/07 script変更
2007/10/28
管理人 芥屋 芥