『Dolphin Street』
そこは、日々JAZZを愛する人たちが集う場所であり、また日ごろの疲れを話すことによって、好い音楽を聴きながら癒す、そんな空間。


虚が出たので、隊長と共に人間界に降りることになった。
「手を出すな」と隊長が言って、一瞬の間に処理をして、ふと気が付くと・・・
 
 
懐かしい音楽が
 
 
目の前の喫茶店らしきところから流れてくるギターの音に耳を傾ける。
その様子に隊長が渋い顔で
「なんだ。あの音が気になるのか?」
と・・・
 
 
 
なんとなく応えたくなくて黙っていると、隊長は小さく息を吐いて
「ついて来い」
と言ったんだ。
『Dolphin Street』 
壁を抜けて店内に入ると、やはりギターを弾いてる男の人がいた。
そして、それを聞きながらリズムをとっている四人テーブルに座って、背を向けている男の人。
その人が、ギターを弾いてる人に話し掛ける。
「あの、良かったら合わせませんか?」
と・・・
え?
と思って思わず身を乗り出す。
俺は、とりあえず空いてる椅子に座った。
隊長も渋い顔をしながらも、やっぱり気になるのか隣に座る。
「へー。あの男、結構遠くの中学で先生をしているそうだ。んであっちの男たちは・・・」
と、帳簿を見ながら話し始めた隊長に、
「隊長。こんなところで。仕事の話はやめませんか?」
と、失礼を承知で言ってみた。
顔を上げた隊長は一瞬何言ってる?というような顔をしていたけれど、周りの雰囲気をチラッと見て
「あぁ・・・まぁ、そうだな。」
と、少し優しい目になって演奏するのだろう人たちの動きを、じっと見ていた。
 
 
 
 
すごい・・・
俺は、単純にそう思った。
自然に体が動く。
音が躍動してる。
こんな演奏を・・・聞けるなんて・・・
 
 
拍手が自然と洩れてくる。
リズムを伴った手拍子。
なぜか、参加したいと、思った。
 
 
「なーに見とれてやがる。そろそろ時間だ」
隊長の冷静な一言で我に返る。
「あ・・・スミマセン」
しまった。
そろそろ尸魂界に帰らなければならない時間だ。
遅れれば罰則だけじゃなくて色々と問題が起きる。
席を立った俺に対し、隊長は立とうとはしない。
そろそろ時間」と言ったのは隊長の方だというのに・・・
 
 
「ま、今日中に帰ればいいか」
 
 
力の抜けた、隊長の声。
え・・・?
「あの・・・」
今、なんて言いました?と言おうとした俺の言葉を遮るようにして隊長が言い放った。
「俺は、尸魂界に一度戻る」
と・・・
ほえ?
「なに間抜けな顔してるんだ。ここにいろよ?移動するなよ?隊長命令だ!」
と言い残して、隊長は壁を抜けて尸魂界へと帰っていった。
 
 
 
 
な・・・
なんなんだ!一体!!
 
 
 
そうこうしている間に、話は年齢の話で盛り上がっているようだ。
霊圧を探ってみたが、誰も霊感がある人なんていなかった。
よって俺の姿も気配も感じられることはないと判断して、近くで話を聞くことにした。
「先生なぁ。そうは見えないけどなぁ」
と突っ込んでいるのは尾栗という人。
その尾栗という人に釘をさしているのは菊池という人らしい。
そしてそれを纏めているのは角松という名前の人物。
逸れた話はそのままにして、二人で話し込んでいるのは、最初ギターを弾いていた人がという名前の人で、あとからドラムを叩いた

人がという名前の人らしい。
その二人は、更に別な話で盛り上がる。
 
 
「クラスなどは、受け持ちで?」
「いやいや。まだまだクラスは受け持たせてはもらえませんよ。なんせ初年ですからね」
「それまでは何をしてたんです?」
「う〜ん。都内の公立高校の臨時ですよ」
「あぁ。なるほど」
さんは、なんか・・・見えないですよね。色々と」
「そうですか?それを言うなら、さんの方が教師に見えないというか、意外というか・・・」
という人に、なんかあるのだろうか。
さんは、言葉を選んでいるような印象を受ける。
 
 
 
 
 
 
 
「おい」
いきなり掛った声に思いっきり叫んでしまった。
「うわぁぁっぁ」
その様子に、隊長が呆れた声で
「なんだよ。そんなに驚くことないだろうが。ホレ」
そう言って、すごく簡単に渡されたのは・・・
義骸?
な・・・なんで?
「なんで?って顔してるな。なんだっていいだろうが。ホレ入れ」
そう言って、隊長は俺を外に連れ出して人目につかないところまで連れて行くと、義骸の中に俺を入れた。
 
慣れない義骸で街を歩く。
いつも抜けてきた壁が通り抜けられない、変な感覚だ。
そして灰銀の髪を隊長も俺も、霊力を使って黒にしている。
斬魄刀はしまった。
持っていれば確実に警察に捕まるから・・・
で、隊長に付いて行くと、そこはさっきの喫茶店。
う〜ん、まさか・・・
 
 
「隊長、もしかして・・・尸魂界に戻ったのって」
「あぁ?」
確信をついて話し掛けると不機嫌そうな顔が返って来た。
この話題、止めよう。
殺される・・・
 
 
 
 
 
さっきの演奏に、サックスが加わっていた。
なんか、段々増えてる・・・
「やりたいんだろ?行って来いよ」
「え?」
言われた言葉に少し動揺した。
見抜かれてる・・・
「いいんですか?」
その言葉に、盛大にため息をつく隊長。
「いいから、行って来い」
そういって手をヒラヒラとさせる。
 
 
「あ・・・あの・・・」
丁度演奏が終わった頃に思い切って話し掛けた。
「ん?」
返事をかえしたのは、サックスを吹いていた同じ年だろうと思われる少年?
「あの、ベース、いいですか?」
立てかけてある楽器の中で、できるものといったらベースくらいしか・・・
「あぁ。参加?全然オッケーさ。ベースなら大歓迎だよ。なぁ先生、さん。この子、参加したいって」
アンプの調子を見ていた先生と言われたさんと、スティックをスネアに置こうとした手をとめてこっちを見たさん。
二人ともいやな顔一つせずに
「いいよ。」
「ベース?大歓迎」
と言ってくれた。
 
 
 
 
「次なにやりましょうか・・・」
客がアンコールを要望してる。
「そうですねぇ・・・。あ、お互い自己紹介まだだったね。俺ってんだ。お前は?」
「あ、俺はです」
君か・・・なんかお前ってどっかで見たような・・・まぁいいか。」
「で、なにするんですか?」
「なぁ、、あそこに座ってるちっこいのはお前の弟か?」
え・・・?
な・・・なんだって?
「いや・・・あの・・・」
「なんだ違うのか。まぁどうでもいいがな」
と言って豪快に笑うさん・・・
よりによって日番谷隊長を!・・・まぁ否定はできないけれど・・・
それにしても、絶対隊長怒ってる
絶対・・・一般人じゃなかったら・・・
まぁ、あとでフォロー入れておこう。
 
 
 
 
 
曲は決まった。
うん。
これならできる。
そう思ってベースを立たせる。
始まって、遠くに座っていた隊長が小さく
「ほお」って言ったのには、全然気付かなかった。
アトガキ
DolphinStreet
2023/08/05 script変更
管理人 芥屋 芥