「じゃ、最後に・・・」
五人が視線を合わせる。
何をやるのか知らされていないシークレットトラックの始まりだ。
「1〜2〜1・2・3・4」
『Dolphin Street 〜ジパング〜』

「すごいなぁ。ドラム、メッチャ上手いですやん。」
「あぁ・・・ありが・・・と・・・」
高校生くらいの長髪の関西弁の男の子と話をしていると、おもむろにがカウンターに突っ伏した。
「ど・・・どうしたん?」
慌てた高校生くらいの男の子が周りを見渡すが、誰も気付きもしない。
しばらく放っておこうかと思ったが、それでも心配になって
「大丈夫なんか?」
と呟くと、その声に答えた眼鏡をかけた少し体格のいい男の人が一人。
「ダメっぽいな。もしかして何か飲んだのか?」
その問いに、カウンターに置かれたさっきまで彼が飲んでいたものを指して
「・・・そこのグラスの物、飲んではったみたいですけど・・・」
といった。
思わず『デッカイ兄ちゃんやなぁ』と思ったが、そんなことは顔に出さずに答えた。
さん・・・飲みましたね?」
?」
「この人はアルコールダメなんだよ。侑士」
「そうなん?」
「あぁ。」
忍足の問いかけに答えたのは、目の前の眼鏡をかけた兄ちゃんだった。
「大丈夫ですか?」
その問いにはやっとの体で手を上げて降参の意を示す。
「どうやらダメらしい」
「んじゃ、連れて帰るしかないな。、すまんな」
「いえいえ。それにしても、いつもと逆ですね。」
っちょ・・・な?今のこと『』って言うた?
どーいうことやねん。何許してんねん!
「そうだな。が飲むなんてホトンドない。というか、ないからな」
そう言って苦笑する菊池には笑いかける。
「じゃ、菊池さんも尾栗さんも。今度、また」
「機会があれば」
「そうだな。」

「ここからなら、俺の家の方が近いな」
「んじゃ、雅行んとこだな」

「しかし、コイツがあんな上手いドラムを演奏するとはな・・・」
ドルフィンストリートで演奏したあとそこにいた客と話していて、思わず酒を頼んだのだろう。
グロッキーになったを菊池のマンションに運ぶ。
運転席には当然菊池が乗り、後部座席でぐったりしてるを介抱してるのは尾栗である。

「全く、飲めないくせに飲むからだ。」
その言葉に、なんとか返事を返そうとするが口をついて出た声は
「・・・すいましぇ・・・」
という、なんとも情けない声。
なんとか意識はあるものの、たかがカクテル一杯・・・いや、一杯も飲んではいない。半分程度だ。でこうなってしまうに、二人は苦

笑を隠せない。
いや、酒が飲めないのは体質なのだから仕方ないのだが・・・

にとってアルコールは毒と同じだ。
昔、初めての飲み会でぶっ倒れたときに出た検査結果が急性アルコール中毒
周りは、『たかがビール一杯で』と馬鹿にしたのだが、肝臓にアルコールを分解する能力はほぼ皆無との結果が出たのを聞いて、『二度

と飲まさない』と思ったのだ。
「久々だな、お前が酒飲んだのって」
「ん・・・」
それを最後に、はぐっすり眠ってしまった。
急に後部座席が静かになったのを不信に思い声を掛ける。
「寝たのか?」
「あぁ。」

マンションの駐車場に車においた後、を背中に乗せながら菊池の部屋を目指す尾栗に声を掛ける。
「何か買ってこようか?」
「いや、水があればいいだろう」

「どこがいい?」
「ベッドでいいよ」
聞くが速いか、もうベッドにドサっとを下ろしている尾栗の姿。
隣に手をつき、寝ているを見る尾栗の視線に心がざわめく。
それを誤魔化すために、冷蔵庫からスポーツドクを二本取り尾栗に渡した。

「何だかんだ言って、俺たちってコイツには甘いよな」
受け取りながらも、視線だけは外さない。
寝苦しいのか、がモソモソと動く。
どうやら服が苦しいらしい。
菊池もベッドに片膝をつくと、が着ているシャツの襟元を緩めてやる。
「なぁ、雅行。」
「ん?」
「お前、こいつのことどう思ってるんだ?」
手を止めて、菊池が尾栗を見た。
「なに」
「雅行は、のことどう思ってるんだ?」
視線がぶつかる。
菊池の視線を探ってみる。
その中にあるのは、熱と・・・まさか


「雅行、お前」
「・・・思ってることは、多分同じだ。」


『菊池さん?』
七年前まだ彼が、『俺が同職』ということは知らなかった頃。
『初めまして。です』
『あぁ、話には聞いてるよ。割のいい運転手だって』
『飲めないならわざわざ連れ出すこともないっていっつも思うんですがね。どうも連れ回されて・・・』
そして、自分が海自の一尉だと知った途端、笑顔が消え、目の前の人物が正しく『鬼の砲術長』と呼ばれている菊池雅行一等海尉だとい

うことが分かったのだろう。
まるで氷のごとく固まったを溶かすのに苦労したのを、ハッキリと覚えている。


「つまり、お互いいなかったら手ぇ出してるってことか・・・」
「そういうことだ。だが、酔ってる人間を無理にするほど馬鹿じゃな・・・い」
手を、掴まれていた。
恐らく無意識なのだろう。
そして、菊池の手を掴んだままは寝返りを打った。
引っ張られた形になった菊池は、の横顔を間近で見る羽目になってしまった。


「ん・・・っぁ・・・」
シャツを羽織っただけのの体は、なまじ裸よりも欲情を誘う。
「んぅ・・・ん・・・っはぁ」
無意識に逃げようとする顎を、尾栗が押さえつける。
「ん・・・んぁ・・・やっぁ・・・」
前に回った菊池の手を退かせようと上から握り、引っ張ろうとするが抵抗にならない。
「んぅ・・・ん・・・んぁ・・・ん・・・っはぁ・・・やっ」
今でも体を朱に染めて、力が入らない体を後ろにまわった菊池に預け、前にいる尾栗から成すがままにされている。
痙攣するときしか力が入らない体で、それでも僅かに羞恥心が残っているのか、首を振る仕草も、本人は抵抗のつもりなのだろうが、添

えてるようにしかなっていない手も、二人の欲情を煽るには十分だった。
「色っぽいな・・・普段が普段だから気付かなかったぜ」
唇を離すと、空気を求めて喘ぐの耳元でそう言うと、菊池と視線が合った。


「なぁ雅行、知ってるか?」
そこは俺の居場所・・・そう言いかけて呑みこんだ。
別にの背中が俺のものってわけじゃないし・・・な。
の背中、すっげ落ち着くんだぜ?」
これは、俺だけじゃない。
科の連中にだって、コイツの背中を借りる奴がいるくらいだ。
それに、黙ってはいるが洋介だって頼ったことがある。
俺の知る限り一回だけ。
は気付かなかったようだが、俺には分かった。
「どういう意味だ?」
「ん?自分が、すっげぇ苦しいって思うとき、こいつの背中に背中合わせてボーっとする。そうするとなんでかな。すっげ落ち着くんだ

よ。安心して寝ちまう奴もいるくらいだ」

「そんなこと・・・」
ありえない。
そう言おうとしてやめた。
多分、尾栗が言うならそうなのだろう。

「ん・・・」
目を覚ましかけ、トロンとした視線を尾栗はマトモに見てしまった。

菊池がの体をベッドに下ろすと
「ん・・・?」
と、不思議そうに菊池を見上げる彼を、上から覗き込んだ。
そしてそのまま唇を奪う。
まだ、アルコールが抜けきってないのだろう。
その息は、少しアルコール臭かった。
「んぁ・・・やっ」
声が一段上がり、体が跳ねた。
見ると、下肢に尾栗の頭が見える。
「ん・・・やぁ・・・んっ」
菊池は、開いている唇に吸い付くと同時に、胸に手を這わせてみた。
「熱いな」

「限界みたいだ」
「そうか・・・」
真っ白になりそうになる頭で、懸命に状況を理解しようとするが、二人から与えられる快楽の淵に突き落とされて、最早自分が何を言っ

てるかどうかすら分からない。
自分のものが、生暖かいものに触れて一気に快楽が体の中で暴れまわる。
その快楽が声となって口から出ようとするのだけど、その口が塞がれた。
「ん・・・ぅん・・・んぁ・・・っはぁ」
そして・・・
菊池は舌を思いっきり吸い付き、尾栗がのものを吸い付いたのはほぼ同時だった。





朝になっても出てこない彼らを、角松が心配になって尾栗・菊池の順で家を訪ね菊池の家に着いた途端
「お前等に何をしたんだ!」
と、恐ろしい顔をしてそう叫んだとか・・・叫ばなかったとか・・・
アトガキ
最後は脱兎。
しっかし『Dolphin Street』で裏が先にできてしまうなんて・・・
どうしたもんかな・・・しかも3pですよ。
どーしたもんかな。これ・・・
2023/08/05 script変更
管理人 芥屋 芥