Break Down
What your Work
「なぁ、あの飛んでるの・・・なんや?」
 
 
最初、黒い鳥が飛んでるかと思った。
だけどしばらく見ててそれが羽ばたきもせず、しかも猛スピードで時折尾の部分から赤い光を出しながら飛んでることに気が付いたから、思わず質問してしまった。
そんな猛スピードで飛ぶ『鳥』なんて、忍足が知るはずもない。
だから気になった。
「ヤス39アルファグリペン」
まるで意識が向いてない、条件反射のように答えが返ってきたから、忍足は更に質問をした。
「なんや、そのグリペンって・・・」
少し忍足に意識を向けたの口からとんでもない言葉が出た。
「この国の戦闘機。数少ない『戦闘機を作れる国』だからな。ここは」
 
 
 
 
結局、町にあるの家に着くまであれ以降会話はなかった。
車を降りた忍足に「ついて来い」と声が掛るけど、やはり冷たい声なのは変らない。
しかし忍足は、彼の今の仕事を聞いてみたいと思った。
「俺を日本に連れて帰るつもりなんだろうが、俺はここで抜けられない仕事があるから無理だよ」
エレベーターでの中、先に口を開いたのはの方だった。
読まれていた。
ちゃんと見てるところは抜け目なく見ている。
最初は再会が嬉しくてあまり彼の表情をみていなかったけど、改めて見ると日本にいた頃とは全然違う、忍足が初めて見る表情の連続であることに気づかされる。
触れたいと、心が叫んでるのを必死に抑える。
「入れ」
と言われて恐る恐る足を踏み入れる。
案内された部屋で思わず呟いた。
「えらい量の紙散らかってるな・・・」
広いリビングに、足の踏み場もないくらいの本とノートとメモ帳らしき紙。
部屋の真中にあるL字型のソファにもそれらが散乱している。
それらに目をとられながらも、「適当に場所作って座れ」と言われて本当に適当にソファに場所を作って座った。
「日本に、帰ってきてくれへんか?」
壁に沿って立っている本棚に何やら本を取りに行くの後姿に声を掛けてみた。
部屋に入って、まるで忍足が存在しないかのように振舞うを振り向かせたかったのかもしれない。
だけどは振り向かずに、首を振って拒否を示した。
「俺は日本には二度と戻らない。それに、お前とは確か会わないっていうのがあったはずだが?」
あの時、提示された条件の中に二度と会わないというのがあったと確信して言う。
「ここで・・・は何してるん?」
「話を逸らすな。質問に答えろ」
振り向いたの、薄緑の瞳の中に自分が写っている。
厳しいの顔に誘われるようにソファを後にして、本棚に近づく。
「なぁ、なんで俺をここに入れた?」
「話を聞いてから追い出すためだ。」
「出て行くと思うか?」
「思ってるさ。お前が『まとも』ならな。」
「さっきあんなことして、『まとも』なはずないやろ・・・?」
「じゃ、ホテルをとらせるためってことにしておこうか?」
「誘ってるん?」
「まさか」
 
 
 
 
言いようのない緊張感が二人を包む。
キスができるくらいに縮まった距離に横たわる例え様のない緊迫感が忍足の心に異様な興奮をもたらした。
こんなに間近にの瞳を見たことはなかったと思う。
本当に薄い緑の瞳。
金糸の髪。
日本人離れした体形。
母親の遺伝子がまともに出たと、初めて会ったときに語ってくれた。
思えば、そこからこの目の前の人物に惹かれていたのかもしれない。
 
 
 
 
「どけ」
「どかへん」
言いながら本棚に手をついて逃げ出せないようにする。
の瞳に力がこもった。
それが合図だったように、忍足が動いた。
「やっめっ・・・ん」
ドサドサ
と、の持っていた本が落ちる音を最後に、忍足の理性が切れた。
アトガキ

この章,管理人は笑いながら書いてました。
何故なら,ヤス39Aのこと出す夢小説って私んとこくらいだろうなぁって思ってさ……
スウェーデンは世界の中で数少ない『戦闘機を自国の力で作れる国』であることは事実です。
2023/08/01 CSS書式
管理人 芥屋 芥