サンと・・・今は友人っていう立場なんですよね?瑞橋?』
『た・・・隊長・・・』
『まぁ、別にいいですけどね。この人の前で手荒なことはしたくありませんし?』
『ほ・・・本気ですか?』
『えぇ、本気ですよ?』
『隊長、勘弁してくださいよ・・・』
そんな会話が交わされていることも知らずに、サンは
「浦原さんも、入ります?」なんていってきたから、思わず
「イインですか?入っちゃって」
と、恐らく顔がニヤけてるんでしょうねぇ、と客観的に思いながら。
「別に、ここは俺たちの場所ってわけじゃないですし・・・どうぞ?」なんて言ってくれますし。
「じゃ、遠慮なく」
その途端、瑞橋は「用事があるから帰る」と言った。
ま、そりゃそうでしょうね。
元十二番隊隊長の前でその第三席が・・・ねぇ
 
 
サン、追わないんですか?」
少し、気になったので聞いてみました。
最初は質問の意図が読めなかったのか、キョトンとした顔をしてましたが、合点がいったようで、
「ヤツが用事っていうからには用事なんでしょ。別に俺が気にすることじゃないですよ。」
それって、関係ないということなんでしょうか?
「気にしないっていうことですか?」
「そういうことです。どうせ明日学校で捕まるし。今日はここに来ることが用事でしたからね。別に・・・」
なるほどね、捕まるから、それが分かっているから敢えて追いかけない。
「ふ〜ん、信頼されてるんですね。彼のこと」
少々妬けますよ、瑞橋?
「信頼?別にそこまでは・・・まぁ、言うなればそれまでのヤツってことですよ。ホントに気になるようなヤツなら追いかけてますって。」
それって・・・
あなたがワタシを追いかけてきたのは、ホントに気になっていてくれていたからですか?
自分のところの隊長を、振り切ってまで・・・
『行くな!浦原さんは追放されたんだ!』
『理由もなく永久追放じゃ納得いかねぇんだよ!を・・・お願いします。記憶や力は恐らく戻らないでしょうけど・・・それでもコイツが選んだ結果です。』
『不思議でした。何故零番隊が存在するのか・・・今やっとわかりましたよ』
『こいつの信念・思い・誓い・それが僕とは相反していた。それだけですよ浦原さん』

 
サンは、ホントに気になる人なら追いかけるんですね」
 
あらあら・・・困りましたね・・・
柱にもたれながら寝てますよ。
それにしても最後のセリフ。
あれは、昔のサンの言葉だ。
嬉しくない?
ハズ・・・ないでしょう?
嬉しいですよ。
ワタシの気持ちは、あの頃から変わってませんから。
 
 
 
眠ってしまったサンを肩にかけカバンを手にもって今の自分の家、浦原商店へと足を向ける。
「お帰りなさい、店長・・・と・・・その方は・・・さん?」
「偶然ですよ。たまたま足湯で会いましてね。それで眠ってしまったので持って帰っちゃいました。」
「では、早速部屋を用意しましょう」
 
 
 
シャツを脱がしたとき、肩のところにある陰陽図に思わず目をやる。
これが、あの零番隊の隊長の捺した印。
あの斬魄刀の印
触れようと手を伸ばすが、その寸前で手を止める。
一息つくと、続きの作業に専念した。
寝かせると、ホント昔と変わらない寝顔。
よく動く顔も、雰囲気もそのまま。
だけど記憶と霊圧と斬魄刀が存在しない。
 
触れてしまえば、恐らく、止められませんよ?
自分で分かってるんでしょう?
 
だけど・・・
 
祈るような気持ちで、たった一度だけのキスを、しました。
 
 
「起きましたか?」
「あのあとサン寝ちゃったものだから連れてきてしまいました。」
最初はここがどこだか検討つかなかったのか、ボーっとした様子でしたけど、
「ここ、浦原商店?」
と、視線だけこっちに向けて聞いてきたので
「ですよ。じゃおやすみなさいサン」
半分、ワタシは逃げるようにその部屋から去りました。
止められる自信は、全くありませんでしたし、なにより・・・
あまりにも無防備なのに半分呆れてしまいましたから。
 
 
今度あんな無防備な姿をワタシの前で晒されたら、・・・次は止められる自信、全くないんですからね?
などと思いながら、浦原は先程彼に触れた唇を手で軽く触れ肩の力を抜くと、頭をポリポリ掻きながら自分の部屋へと足を向けたのだった。
アトガキ
自分なりにがんばったつもりです。微エロ?
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管理人 芥屋 芥