「ごくろうさん」
そう言われ,三番隊隊首室を出ようとしたら後ろからタンッと開けた扉が閉められた。
「ごくろうさんとは言うたけど,帰っていいってまだ言うてへんよ?」
それはまるで・・・
壁に押さえつけられて,上から降る彼の唇に耐えている。




髪に 耳に 頬に 首筋に そして唇に




それをまるで無表情に,は受ける。

「なんや,感じひんの?」

耳元で囁くように市丸が言うが,それでもの表情が変わることはなかった。

 
 
 
 
「何も言わんのやね。ほな,このまま僕の好きなように解釈するけど,ええんか?」
ニヤリと笑って市丸が言う。


 
 
 
そこで初めてが口を開いた。

 
 
「市丸隊長,あなたは後悔しませんか?」


 
それは,初めて会った時にも聞いた言葉。
「ん?」
その言葉に,市丸が止まる。

 
 
 
「なんで,そんな野暮なこと聞くん?」

少し,体をから離し,聞き返した。

「あなたは,どこか迷っているように見えましたので」
何が,とはは聞かなかった。
ただ,静かに「後悔しないか?」と問うただけ。
だけど市丸にはそれが何を言い表しているのかが分かる。

 
「今更やろ」

 
少し投げやりの形で市丸が答えた。
こちらも,「何が」とは言わない。
「そうですか」
と,意味を理解したが言った。


 
 
 
 
 
髪に 耳に 頬に 首筋に そして口に,彼の唇が降りる。
「意地っ張りやなぁ,自分。もうちょい表情崩せんの?」
そう言って胸に置いた手を僅かにずらす。
それでもの表情が変わることはなかった。

 
 
 
「なんや,人形抱いてるみたいやな」

 
 
 
そう言った市丸の声が,やけに虚しくその場に響いた。

アトガキ
ちょっと短め・・・なので甘め仕様・少し痛いかな・・・
2023/07/21 CSS書式修正
管理人 芥屋 芥