「そろそろ、お芋の季節・・・ですか」
パチ
そう音を立てながら、将棋を指す二人の死神。
「そうじゃの
焼芋
「王手じゃ」
「王手じゃ」
「あ、ずるいです」
「な〜にが『ずるい』じゃこの馬鹿もんが。ほれ、打ってこんか。」
余裕綽々の顔でを見るのは、一番隊隊長基、護廷十三隊総隊長山本元柳斎重國その人である。
少しふてくされた表情で一手指すと、途端山本総隊長の顔が変わる。
「むむッ」
「逆王手・・・ですよ。」
ニヤリとした顔で、山本を見るに、
「お主、腕を上げたな」
と山本が苦し紛れにそう言うと、
「まいったわい」
とあっさり負けを認めて席を立った。
「お主の言うと通り、そろそろ焼き芋が美味い頃じゃのぉ」
言って、障子を開けた向こうにあったものは、
「ほー。焼き芋・・・焼いてたんですね」
「食うか?」
「頂きます」
 
 
「ほれ」と言いながら手渡された焼いたばかりの芋をは「アツツ」といいながら食べている。
その姿を横目に見て、山本が口を開いた。
「で、お主これからどうするつもりじゃ」
「どうするって?」
「隊舎を立てるなり、何なりすればどうだと問うておるんじゃ」
「あぁ。あのことですね。別に、今のままでいいですよ?どうせ僕は五番隊の平隊員ですから。」
そう言ってお茶をすする。
「その平が、零番隊の隊長束を着てこんなところにおるのはどういう了見かの。」
「着てくるようにと、指定したのはそちらでしょうに。それに隊長、今更・・・でしょう?そんなことをすれば他の隊員が変に思いますよ。それに・・・」
と言葉を一度切り、お茶をすする。
「隊長だけの隊なんて、誰の目から見てもおかしいでしょ?」
そう言って微笑う。
途端、彼の周囲にある透明な霊圧が、スッと揺れる。
「ま、そこまで考えておるなら、儂から言うことはない。」
お茶をすすりながら、縁側で、枯葉が焼けるのを見ながら、焼き芋を食べる。
「それにしても、ホントこの芋は美味しいですね」
一つ目を食べ終わり、二つ目に手を伸ばすに、
「儂はの、。学院を設立しようかと思うのじゃ」
静かに出た言葉。だが、揺ぎ無い信念を持って発せられた言葉。
「ほぉ。で、名前は?」
「真央霊術院」
 
 
「まーた大層なお名前で。」
率直な感想をが洩らす。
そして、 ズズっとお茶をすすりながら、ゆっくりと山本を見ると、
「そんなことして、護廷十三隊の強化を図るつもりか?」
と、真剣な目をしては言った。
「そうじゃ。色々といい逸材も揃っておる。設立時期には良い機会じゃ」
「そうか。ま、その辺りはご自由に。それじゃ、僕ももう戻りますね。こう見えても色々忙しいんですよ。平は平なりに」
席を立ち、それではと言って背を向けるに、後ろから声が掛った。

 
 
 
 
 
 
 
 
、お主いつまでそうやって『草』でいるつもりだ。」
厳しい口調で山本がそう言うと、
は振り返りもせず、ただ少し上を見上げて、そしてすぐ真っ直ぐに視線を戻し相変わらずゆっくりとした口調で、だが厳しさと決意をその言葉に乗せて、
「そうですね。尸魂界がある限り・・・そして僕が納得いくまで、ですかね。それと隊長、そろそろ僕の移動の件考えておいてください。それでは失礼します。焼き芋とお茶、おいしかったです。ご馳走様でした。」
音を立てずに、そこから消えた。
 
 
 
 
 
 
 
 
「零番隊が出てきたって噂・・・知ってるか?」
ふいには足を止めた。
誰かが壁の向こうで話している。
「あぁ知ってる。全滅しかけた隊を救ってくれたっていう噂だろう?」
「あぁ・・・」
「どうなんだよ。」
「わからねぇけど、護廷の紋章に、部隊を表す数字が何も書いてなかったような・・・」
どうやら声音からして三人のようだった。
「「お前、見たのか?」」
詰め寄った口調で他の二人が言う。
だが、
「だから、『もしかしたら』だよ。俺だって意識はハッキリしてなかったからな。」
「ま、元々存在してるのかすら全然わからねぇ部隊だからなぁ。どうせどっかの隊長と間違えたんだろう」
 
 
 
 
 
 
 
 
零番隊
その存在は、噂の中だけにしか存在しないとされている幻の部隊。
誰もその隊員の姿を見たものはなく、ましてや隊長の姿など存在するのかどうかすら怪しいとされている部隊。
 
 
 
 
 
 
 
『そうだね。でも、油断はだめだよ。今度は助けないからね。』
そう心の中だけで思って、は再び歩き始めた。
アトガキ
随分昔の話になったので,恐らく本編で生きてるのは山本さんくらいだろうなぁとの想いから主人公以外名前を出しませんでした。
でも,この話でなんとなく『零番隊の存在』というか,『有り様』が見えてきた,といった感じですね
2023/07/21 CSS書式修正
管理人 芥屋 芥