?」
廊下の向こうで、八番隊長である京楽と話してるのを見て、なんだか面白くないと、感じたんだ。
宣戦布告
灰銀の髪が風に揺れている。
そこだけ空気が違う、そう感じさせるの周囲にはいつも人がいて、俺は中々入っていくことができねぇ。
俺が見ていることに気付いたのか、京楽は笠に手を当てて影を作り、余裕の笑みでこっちを見た。
だけどそれは一瞬で、またに話し掛けている。
そして今更気付いたかのように
「おやおや。そーいえば君は仕事の途中だったねぇ」
っち。




っち。
何とぼけたこと言ってやがる。
さっきから気付いていやがった癖に、しかも勝手に仕掛けてきやがって。
ま、それでもこっちが乗ってやる義理はないんだが、立ち去ろうか迷っていると、
「あ、隊長!」
がこっちに意識を向けた。
そして走ってくるその姿を見て、余計に俺の心境は複雑になった。
「お前、仕事はどうしたよ。確か六番隊に行って来いって俺は言わなかったか?」
呆れ顔になっているだろう俺を見て、は書類を差し出した。
「えーと、朽木隊長の印は頂きました。あとはこれを提出です!」
言うが早いか、「行ってきます」
と言うと、一瞬ではそこから走り去っていった。
だが・・・
「あ、京楽隊長!お話楽しかったです。またよろしくお願いします!」
「あぁ。ボクも楽しみにしてるよ〜」
、お前それだけ言いに戻ってきたのかよ・・・
それにしても、満面の笑みだ。
しかも其れを向ける相手は俺じゃなく、京楽ときてる。
 
 
 
 
 
 
 
「ん〜。やっぱり可愛いねぇ君は」
「てめぇ、他人(人)の隊の奴に手ぇ出すんじゃねぇよ」
「おやおや。別にボクは出してるつもり、更々ないんだけどねぇ」
何考えてるかサッパリ分からない顔をしながらも、が消えた方向を見る京楽の視線には愛情が溢れていた。
それにしても・・・
可愛いだと?
いや、アイツは可愛くない。
断じて可愛くない。
第一男じゃねぇか
男にその形容詞は似合わねぇだろう。いくらなんでも
でも・・・
なんつうか。アレだな
あいつは
 
 
 
 
 
そう
 
 
透明なんだ。
 
 
 
 
に何かしやがったら、ただじゃおかねぇからな」
少し低めに声をだして言うと、
「ん〜。その忠告はボクじゃなくて三番隊の隊長さんに言ってくれないかな?」
京楽の目は、珍しく真剣だった。
「市丸?」
「うん」
一呼吸置いて放たれた言葉に、俺は衝撃を覚えた。
 
 
「ずっと付きまとわれてるって、ボクに相談してきていたんだよ?」
な・・・
なにぃぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「っちょ・・・ちょっと待て。なんでがお前に相談するんだよ?」
「ん?まぁ、成り行きというやつさ」
詳しく話せば長くなるからということで、要点だけ簡潔にまとめられた話を聞いて、俺は頭が痛くなってきた。
 
 
 
 
あの狐・・・
許さねぇ
絶対に許さねぇ
 
 
 
 
 
 
 
 
「あ・・・隊ちょうぉ!」
隊舎に戻った俺は真っ直ぐにの元に向かい、首根っこ掴んで外へ連れ出した。
は、一体何が起こったのか、何故自分に首根っこ捕まれているのか訳がわからないといった顔をしている。
そして、近くに誰もいないのを確認すると、話を切り出した。
「事情は京楽から聞いた。なんで黙ってた。」
は一瞬何を言われているか分からない、そう言った顔をした。
だがそれに付き合っている余裕は今の俺にはない。
「なんで俺に相談しなかったって聞いてるんだ」
厳しい言葉に、の顔が見る見る沈んでいく。
「三番隊に行きてぇのか?」
ガバッと顔を上げて、首を振った。
「ならなんで俺に相談しねぇんだよ・・・」
・・・
「すみません」
今にも泣きそうなの顔。
あぁ・・・
こんな顔が見たいんじゃねぇ
コイツには、笑っていてほしい。
透明な空気を纏って、周りを和やかにしていて欲しいのに・・・
「ま、言っちゃぁなんだが、俺はお前を三番隊なんかに渡す気はねぇからな。それだけは覚えとけ」
「・・・はい」
「で、この件は俺が片付けるから、お前は一切手をだすな。いいな」
有無を言わせない口調でそう言うと、は大人しく頷いた。
 
 
 
 
 
「市丸君に宣戦布告したんだって?」
後ろから掛ってきた声は京楽のもの。
「あぁ」
「あーあ、君と市丸君との仲があまり良くないのは知ってたけど、まさかねぇ」
「なにが『まさか』だ」
「いや、気付いてないならそれもまた一興さ」
 
気付いてない?
なにがだ?
もしくは・・・何を?
 
 
「あ、隊長!書類に印をください。あと隊長の分だけなんです」
隊舎に戻ると、いつものの声が響いた。
相変わらず纏う空気は透明で、やっぱり周りには人がいる。
〜なにか昼でもおごれ〜〜」
早仕立てられながらも、からかわれながらも、周囲のを見る目は穏やかだ。
「印は執務室にあるから、来い」
「あ、はい」
顔を上げて真っ直ぐに俺を見る。
「失礼します」
改まった声で扉の前でそういうに苦笑を洩らした。
「以上か?」
印を押して、それで終わり。
「はい、以上です」
明るい声とは裏腹に、の顔はどこか暗い。
「どうした?」
「あ・・・いえ・・・あれ以来市丸隊長の姿を・・・見なくなったなぁって思いまして」
あぁ
あの件か。
「お前が気にすることじゃない。」
「はぁ・・・」
「ま、お前が望めば三番隊に異動願い書いてもいいって思うんだが、イヤなんだろ?」
「はい。」
真っ直ぐに前をみてそう言い切った。
、ちょっとこっち来い」
「え・・・?」
「いいから」
机を挟んでの顔を見上げる。
その表情には、戸惑いと驚きと疑問が混じっていた。
だけど周囲にある透明な空気だけは変らない。
周りに人がいない分、それがハッキリと分かる。
 
 
 
 
 
どうして市丸がコイツに興味を持ったのか、なんとなく分かった。
透明で、自分色に染めたくなるんだ。
市丸のような人間にはもってこいな空気を持ってる。
だけど、譲りたくねぇ
あんな奴に持っていかれて堪るかよ
そこまで思って、俺は一つの結論にたどり着いた。
 
 
 
 
 
「あ・・・あの?隊長?」
「あ、あぁ下がっていい」
動揺、してるよな。
これじゃぁ俺がを好きみたいじゃねぇか!
 
 
 
 
 
「実際、そーなんでしょ?隊長」
「・・・かもしんねぇ。誰にも言うなよ?松本」
そう言った俺の顔、絶対赤くなってる・・・ハズだ
アトガキ
初BLEACHです!
隊長の名前。最後まで出てこなかったんですが,(出さなかったんですが)誰だか分かりましたでしょうか?(エ・・・分かりすぎ?)
14000ヒット御礼です。
ゴ申告がなかったので,持ち帰りはご遠慮くださいませ。
2023/07/21 CSS書式修正
管理人 芥屋 芥