文字コードの関係上,一部原作と違う文字があるのが,おそらく分かるかと思います。
原作が使用している文字はUNICODEといいまして(私も今回初めて知りました),ただのShift-Jisでは表現しきれない旧漢字などが使用されておりまして,ネットじゃその表現が難しくて諦めました。
で きたら私自身「原作に忠実に漢字を表現したい」と思ってはいるんですが,それが無理なので今回同音異字体が多いかと思います。
ご了承いただけたらと思います。
。少し話がある。ちょっと顔を貸せ。」
十番隊隊舎へ続く道の途中で、僕の前に現れたのは、やはりこの人でした。
「ん?」
そう言って、がその人物の顔を見た。
「随分急ですね、山本総隊長。僕に何か用ですか?」
と、さっきより少し硬くなった表情で目の前にいる山本総隊長に向けて声をかける。
「頼みたいことがあっての。隊舎におるものかと思って先程そちらに行ったところじゃ。」
じゃ、僕の帰り待っていましたね?
そう思ったけれど口には出さない。
「用件は?」
この言葉は、十番隊三席としての言葉ではなかった。
第二の顔としての言葉だった。
「とりあえず、双極の丘をなんとかせねばならぬ」
表か裏か
壊され繋がっていないその中心のぽっかり空いた穴に、磔架が左右からお互いの腕を伸ばしていた。
それを見上げながら、もう一方の処刑人である彼、キコウ王が封印されていた場所へ視線を向ける。
そこにはもう、矛がない。
それはそうだろう。
何故なら彼は壊されてしまったから。
これもまた、藍染が残した爪跡。
彼が、京楽や浮竹達を止めなかったのは、もう既に彼女から崩玉を取り出す新たな方法を見つけていたから。
だからこそ、それを利用し戦力分散へと繋げた手腕。
鮮やかだと、思う。
今回のことで、何をとっても藍染に踊らされていた自分達。
最初に朽木ルキアが帰ってきた時、いや見つかった時点で彼等は行動を起こしていたこと。
このことは彼女の発言で初めて知った。
まさかそんなに早くから行動を起こしていたとは・・・と。
なぜなら、彼女が帰ってきたとき藍染が自分に対してなんて言ったか、痛い記憶と共に覚えているから。
『そろそろ、自分達も動く』
と、まるで今から動くかのような台詞を吐いた。
だがあの時、既に動いていた。
僕が、『俺』として藍染に会ったのは彼女が帰ってきてからすぐだから。
四十六室が殺されていることは分かっていたが、それを言うことは出来なかった。
あの時点でもしそう言ってしまえば、間違いなく疑いの目は自分に向かう。
しかも動けない自分では、どうしようもない。
事態が動いていくのを、ただ聞き、見るだけしかできなかった。
情けないなぁ・・・
壊された磔架とない矛があった場所を見上げているの、白い隊長束が風に揺れる。
「随分早いな」
後ろから掛った声に、の考えは中断した。
「指定してきたのはそちらですよ。」
振り返って、穏やかに言う。
その言葉に、山本が「むう」と言った。
「結局は藍染に全員が踊らされていた。
 雛森は藍染の見せ掛けの遺志を継ぎ、日番谷を追った。
 その日番谷は市丸を追い、二人は衝突した。突き止めたときには既に藍染の手の中だったとういわけだ。
 唯一藍染を追ったのはお前と卯ノ花くらいじゃが、そのお前が真っ先に動けなくされたのは、お前が最大の障害だったからに他ならん。
 京楽と浮竹たちの動きとてそうじゃ。疑問を投げかけてきたと、阿散井は言った。それを立ち聞いた京楽。最初から処刑には反対の立場であった浮竹。この二人に言葉はいらんからの。」
いつになく口数が多い山本にはその言葉を黙って聞いている。
「何より、全隊長を前にして旅禍に対し『全面戦争』と言ったのは儂じゃ。これも藍染の計画の内。裏では高笑いが止まらなかったであろうな」
苦渋の色を覗かせて、山本が言った。
「山本だけのせいじゃないと思うよ。事態が動く前に潰せなかった僕にも原因はある。」
静かに声を発したに山本が視線を向けた。
「相手を躍らせる、それについては藍染の方が正直言って上だった。
 一介の平である僕の声など、偽りの藍染の姿を知っている者には届かないということを、彼は計算に入れていた。
 それどころか、彼は僕が零番隊の隊長であることを知っていたし、四十六室が殺されていることを知っていることも恐らく知っていただろう。
 徐々に早まる処刑の日付から考えて計画に多少の変更はあったんだろうが、それでもそれを修正しても成功させることができるくらいの、綿密な計画だったということだよ、山本」
ザッという音を立てて、風が吹いた。
「さて、それじゃ彼を復活させましょうか」
暗くなった雰囲気を流すかのように少し明るめの声がから洩れる。
「山本、結界をよろしく」
そう言われ、山本が結界を張る。
 
 
 
 
 
 
 
真に恐るべきなのは、こやつかもしれんなと、驚嘆を込めて山本は思う。
本当の霊圧の強さを知る者は、瀞霊廷の中でも恐らく己一人であろう。
こやつがあの時万全の状態であったなら、あの三人はおろか、あの空間の間から見えていたギリアンクラスの虚ですら倒していただろうと、そう思う。
反膜が止められる稀有なる死神。
人間がのことを「最瀞の死神」と呼ぶのと同時に、その音には「再生」をかけているとも言われておるからの。
自らに霊圧の封印を、この瀞霊廷の中ですら行わなければならない死神は、この尸魂界の歴史においても儂はしか知らぬ。
今正にその封を解き、目の前にキコウ王の入った矛が再生されていく。
この尸魂界に散った彼の霊圧の一つ一つをが集めている。
他の霊圧の影響で、白いはずの森羅光玉に臙脂色のものが混じる。
あれが、キコウ王の霊圧。
ゆっくりと、一つ一つの霊圧を固めてゆく。
あの光の塊に触れることは以外には許されてはいない。
もし他の者が触れれば即座に消滅してしまうであろう、それほど高濃度の霊子体。
斬魄刀数百万本にすら相当する彼の霊力を、その手で直に触れられるのは、ただ一人。
完全に再生された矛の中に、その霊子体が吸い込まれていった。
そして、その中からまるではじき出されたように出てきたのは、白い玉。
それを静かには拾う。
「終いか?」
そう問うとは静かに頷いた。
「磔架の再生も、彼の再生と同時に行いましたので、これで終局です。」
 
 
 
 
 
「お主、また更に霊圧が上がったの」
茶菓子を取って山本が言う。
「そうですか?」
と、お茶をすすりながらが言う。
パチ・・・
「むぅ」
少しがうなる。
どうやら山本はあれから将棋の腕を上げたようだ。
ならば・・・
パチ
今度は反対に山本がうなった。
「お主・・・」
これで歩が裏返り、ト金になる。

 
 
 
 
 
 
 
 
表か裏か
平が、最強になった瞬間でもあった。
アトガキ
だから,将棋・・・
じゃちょっとアトガキじゃ足らないので,ちょっとだけ補足。
この二人には,山本総隊長は表だって・主人公は裏での活躍専門・・・という意味もあったりします。
2023/07/21 CSS書式修正
管理人 芥屋 芥