辺りに、突風が巻き起こった。
!浦原!!」
その叫びさえ、かき消されるほどの風の音があたりに吹き荒れている。
台風
周りには、霊圧で出来た風の壁。
「これは・・・」
その中にと、浦原喜助は閉じ込められていた。
『呼んだな。我を』
吹き荒れる風の中から声がする。
この声は、斬魄刀の声だ。
そう判断し、浦原は問い返した。
「ただ名前を言ったダケでしょう?それじゃ呼んだとは言わないんじゃないですか?」
『名を、が言う。それだけでも我は待った甲斐があったというもの』
「100年ちょっと待っただけで、もう我慢できなかったんですか?」
浦原のセリフに、が僅かに反応する。
斬魄刀の霊圧に中てられて、動けないのだ。
(な・・・ちょ・・・ちょっと待て、下駄帽子。今なんて言った?100・・・年?・・・100年だと?!ふ・・・)
「・・・ざけ・・・るな」
「ん?」
自分が支えているの体に、力が戻っていることを感じた浦原は彼を見る。
「どう・・・し・・・」
「ふざけるな!なんだよ100年ってコラ下駄帽子!人間、100年ちょっとって、そんな簡単に生きられるわけないだろうが!テメェふざけてるのか?!」
勢い余って、殴りかかろうとするに対して、浦原は至って冷静に答えた。
「だって、アタシは人間じゃないですから。100年くらい、生きられますよ。それに・・・あなたもね」
 
 
 
 
え?
な・・・なに?
「なに言って・・・」
が、固まる。
相変わらず風の壁が周りを遮断しており、台風かと思うくらいの風が吹き荒れているが、真中は恐らく目の部分に相当するのだろう。
至って穏やかな風が吹き抜けるだけだ。
「この台風のような嵐にしたって、サンがちゃんと制御していればここまで荒れることはない。それもこれも、全てはこの人を封じたアナタの所為なんですがね」
と、最後のセリフは上を見てそう言い切った。
上?
がつられて見ると、そこには黒い着物を着た、一人の銀髪の少年が空中に立っていた。
いや、立っていたという表現はおかしいかもしれない。
空中だから、浮いてる。
・・・浮いてる!!
「う・・・浮いてる!浮いて・・・うぁ!!」
いきなり目の前に現れたものだから、咄嗟に反応できなかった。
「・・・元隊長に向かって、指差すのもどうかと思うんですが。」
と、その顔に苦笑を宿し、ゆっくりとした口調で言う、先程の少年。
初めて聞いたような気がしない、その澄んだ声。
「解きに来たんですか?それとも・・・」
警戒心を隠さずに言葉を発する浦原に対し、少年は
「解きに来ました。浦原さん、崩玉が藍染の手に渡りましたよ。」
と、事務的に答えた。
だがそれ以上に、その言葉に込められた意味を、浦原は受け取った。
「都合が、良すぎませんか?」
「それは、あなただって同じでしょう?旅禍・・・いや、黒崎一護という死神や石田という名前の滅却師などを尸魂界に送りつけて、散々彼等を動きやすくした挙句、戦力の分散までやってくれた。それだけじゃない。他にも・・・」
「石田?黒崎?」
「知ってるの?」
「同じクラスだ。あいつ等がどうしたって?なぁあんた、一体何を知ってる!」
「これは・・・」
「解かれた方が話が早い・・・デスね」
 
 
 
混乱する。
あいつ等が一体なんだっていうんだ?
何をしたって?
そういえばこの少年の着てる服、少し前に見た黒崎が来ていた服とかなり似てるかもしれない。
それに、解くって何を解く・・・
 
 
 
混乱してる間に、話がついたようだ。
サン、座ってください。」
「何を」
「いいから、座って。それでいいですよね、風梗?」
と少年が、さっきから変わらずに吹き荒れている風に向かって話し掛ける。
『あぁ。』
風の中から声が響く。
「ちょ・・・ちょっと待て!何がなんだか・・・」
分からないと言おうとしたが、口をつむぐ。
「座って。」
と、刀を喉元に突きつけられたからだ。
ペタンと、そのまま崩れ落ちるように座った。
腕を、下駄帽子に掴まれなかったら、きっと膝くらい畳で打ち付けていたはずだ。
喉元に突きつけた刀を、ゆっくりと目の前にもってくると、こう言い放った。
 
 
 
 
「卍解
  
   
    
               刻綴 森羅光玉」
 
 
 
 
「な・・・」
刀が、消えた。
柄も、鍔も・・・ただあるのは、光の玉だけ。
 
 
 
 
「終刻解除 始刻解印 
    
                        封解」
その時、体の中でいつかのときのように、何かが爆発した。
そして先程まで吹き荒れていた嵐のような風は一気に収まり、一つの形を作ってゆく。
まるでそれは飴細工のように、風に意思でもあるかのような・・・いや、声を発するくらいだから意思があるのだろうが、兎に角不思議な光景だった。
ドッ・・・
畳に刺さった一本の刀。
サン・・・」
うずくまったまま動かないに、心配そうに声を掛ける浦原。
「オイ、大丈夫か?」
風の壁がなくなったことで、もう一人が声を掛ける。
「って、じゃねぇか。元気だったか?」
「お陰さまで。それにしても、あなたの息子さんが散々引っ掻き回してくれましたよ。」
と、嫌味を言うことも忘れない。
「おう、言うじゃねぇか。って、あのヤロウ何したんだ・・・」
自分の息子の散々ないわれように、親としては嘆くしかない。
「で、の封印は・・・」
「たった今・・・」

 
 
 
「隊長、都合良すぎっすよ」
と、の声が重なった。
目の前のを、『隊長』と呼べるのは、彼しかいない。
「ま、それは気にするな。で、話。分かってるの?」
と問い掛ける。
「そりゃね。お、一心じゃねぇの。お久し。元気だった?」
と、いつもどおりに声を掛ける。
最後に浦原を見て、
「喜助・・・」とだけ名前を言った。
 
 
 
『修復はやっておきますから、あとは浦原さん、黒崎さん。こちらのことお願いしますね』
と、はそう言い残して尸魂界に帰っていった。
「あ、隊長!もし破面が来たら迎え撃てばいいんですか?」
最後のの問いかけに、は首を振った。
それは、少し待ての合図。
「了解!」と、こちらの敬礼では自分の隊長が尸魂界へ帰るのを見送った。
 
 
 
「じゃ、俺帰るわ」
といい、黒崎は家に帰っていった。
「遠慮しなくてもいいぜ?」とからかったに対して、「お前等見てたらイライラすらぁ」と、言い返しながらそれでも顔は笑っていた。
 
 
 
「なんにもないけど、よかったら座れよ」
と、座布団を差し出しながら言う。
浦原は黙ってそれに座りながら、後ろを向いて座布団を出しているの手を引っ張った。
「うわ!」
後ろに倒れこんだその隙をついてそのまま抱き、の頭に顔を埋めて、
「本当に、戻ったんですね」
「うん」
「記憶も。」
「うん」
「斬魄刀も」
「うん」
「死神としても・・・」
「あぁ。」
「戻らないかと、思ってました。サンが忘れてるのかと」
「あのな、隊長が忘れるはずねぇじゃん。あの人、俺だけじゃなくて色んなヤツを封印してるんだぜ?それゼンッブ覚えてる驚異の記憶力の持ち主なんだ。だから忘れるなんてことは有りえんよ」
明るく言った
回ってる腕に力がこもる。
 
しばらくして、の静かな声が響いた。
「誰もお前を責めねぇよ。商店のやつ等も、夜一や一心も、尸魂界の連中も、当然俺も。皆分かってるよ。お前が一番自責の念に駆られてるってことをな。だからこれからじゃねぇか。藍染のやろうとしてることを止められるか。今はそれだけだよ喜助。な?それを何とかすりゃぁいいんだよ。」
「なんとも出来なければ?」
「お前の悪い癖だぞそれ。最悪な状況をいつも考えるってところ。ちったぁ前向けよ。大体お前にはお前のやることあるだろうが。俺はな喜助。お前の技術力は尸魂界一だと思ってたんだぜ?後任に着いた涅って野郎ですらお前には叶わない、ってそう思ってるんだ。大体お前局長だったんだろ?だったらやれることがあるはずだぜ?後悔するより今は前向けよ。やっちまったもんはしょうがねぇから、今はそれをどうするかだ。」
そこで一息ついて、更にの言葉が続く。
「ま、隊長がああ言うくらいだから、結果的に向こうに行った連中が尸魂界を救ったことになるんだろうが、それにしても黒崎が死神になってたとはなぁ。全然気付かなかったぜ」
と、髪をかきあげながら言った。
「そりゃ、霊圧を感じることもあなたは出来なかったんですから、しょうがないですよ」
首に顔を埋めて喜助が言う。
「だから泣くなって。それに今回謝る相手が違うだろ?な?」
腕に込められてた力が増して、少し体が痛い。
これから始まるかもしれないことを予想して、が叫ぶ。
 
 
 
「お前、前俺が戻る前一回やっただろ?だから今回は無し!いいな?!」
「えー!イヤです!!」
アトガキ
・・・う〜ん
お題はどこに?
というか,メインになれないのは斬魄刀の悲しさか・・・
それにしても,浦原喜助との関係は隊長公認?
ギャグおちですか・・・
2023/07/21 CSS書式修正
管理人 芥屋 芥