「触れることすら、できんとな」
その時、声が、走った。
誰もが予想してなかった人物からの声が、響いた。
「八万一切後跡となせ 森羅光玉」
信じるもの
突然止まった『反膜』に驚くことなく、ただ冷静に藍染は口を開いた。
これを止めることが出来るのは、尸魂界全土において、ただ一人。
「あぁ、君か。君」
「藍染・・・」
「最もやっかいな斬魄刀の持ち主が来てしまったようだね」
「感慨深げにそんなこと言わないでもらいたいですがね。」
護廷十三隊の、何も数字が書かれていない隊長束を着て、ゆっくりとが歩いていく。
「動きやすかったのではないではないですか?」
「あぁ。旅禍達のお陰でね。そこに転がっているオレンジ髪の少年が、一番・・・私たちの壁になってくれたのだから」
「でしょうね。で、なぜあそこに卯ノ花が来ることを予想した?」
「予想?そんなものじゃないさ。確信だ。何故なら彼女は君から直接、君の正体を明かされているし、何より君は四番隊隊舎で熱を出していたからね。」
「熱を出させたのは、一体だれだと思ってる」
「もちろん、僕さ」
「熱を引かせたのは、計画上僕が必要ではないと判断したからか?」
「そうだ」
間合いを計り、距離をおいたところでの足が止まる。
「どこまで君は人を騙せば気がすむんだ」
「それは、私のいう言葉じゃないか?零番隊の隊長が、平の隊員をずっとやっている。そして、その零番隊の本当の姿は、中央四十六室直轄部隊と・・・ね。最も、このことを知っているのは君と、山本総隊長だけだったようだがね」
そこで、の顔が変わる。
現世でいえば、司法機関である中央四十六室は、戦力を持たないとされている。
だが、それだけでは不安だと昔の四十六室の決定で、どこにも所属し得ない部隊を作った。
それが零番隊であり、白刃の矢がたったのがだからだ。
瀞霊廷の中でも、最高機密の部類にはいることを知ってしまったのなら・・・
 
「藍染、この時間が止まった中で、死んでもらう」
「君に僕は殺せないよ?君」
言葉と、霊圧のぶつかり合い。
そのとき、『限界が近いです。主上』
斬魄刀がに語りかける。
君、もう一度言うが、来るつもりは・・・」
「ない」
静かだが、凛とした声で答えた。
「そうか。そろそろ解きたまえ。そちらも限界なはずだ」
彼と、自分の実力がほぼ互角か、もしかしたら彼の方が強いかもしれないことを確信している藍染が、己の限界線を初めて引いた瞬間だった。
「最後だ。僕は、君に鏡花水月の完全なはずの催眠が、不完全にしか掛っていないことを知っていたよ」
 
 
 
 
 
 
 
「私が天に立つ」
そう言い残して、藍染が消えた。
そのあとはもうその場がひっきりなしに四番隊の隊員たちが走り回っている。
その中で、一人に対して各隊長クラスが質問攻めにしている死神がいた。
「だから・・・僕の任務というか、存在意義は護廷十三隊の内偵・調査・監視なんですってば。今回見事に失敗してますけど・・・」
ブスっとした顔で、質問攻めにあっているが言う。
「ってことは・・・」
「随分前から動いているのは知っていましたけど、向こうにこちらの動きを察知されないように動くのは中々骨でしてね。特に、藍染の本当の顔を知っていて、かつ向こう側ではない人物なんて、皆無でしたから・・・」
そりゃそうだ。
さっき見たあの隊長の顔が、今でも忘れられない。
己が天に立つといった時の顔が、離れない。
「じゃ、君が色々平として各隊を渡っていたのは・・・」
「こちらが要請することもあったし、が何を掴んだのか、言ってくることもあった。最近じゃ三・五・九・・・先の裏切った隊長のところをな」
「知ってたってわけなんだな」
「一応は、掴んでました。だけど九番隊にいたときにちょっと僕的に無茶をやったものだから、向こうに動いていることがばれましてね。それからはほとんど動けなくなりましたけど・・・」
「無茶とはなんだ?」
「当時四席だった檜佐木の隊員を・・・ね。そこまで上にいくつもりは無かったのですが、抜擢されて・・・それであるときに斬魄刀を解いてしまった。それでバレたんです。」
檜佐木が思い出したようにポンと手を叩いた。
「あの時か」
「はい」
「じゃ、私に教えてくれたのは・・・」
「あの時既にばれていたんですよ。東仙にね。それから藍染に話が通ってしまった。だからその直後、十番隊に飛ばされたんです。」
「なるほどね・・・」
感心したように京楽が言う。
裏の裏に精通してるってことか。
穏やかな外見や雰囲気につい見過ごしそうになるけれど、こいつは・・・
「如何せん。儂と同じくらい生きとるからな。は・・・」
ポツリと総隊長が言った言葉に、一同それぞれの反応をする。
「嘘・・・」
「まじかよ・・・」
「ありえん」
、本当なのか?」
「そんな・・・注目しないで下さいよ。山本も、余計なこと言うな。」
その発言には、長年共に歩んできたものが見せる、気安さが言葉にあった。
ということは、肯定したも同然だった。
驚いている死神たちをよそに、は一護たち「旅禍」と呼ばれた少年たちに向き直る。
 
 
 
治療を受けている一護に対して、が口を開く。
「はじめまして。僕は、護廷十三隊 零番隊隊長と言います。今回君達が来たことで、戦力分散どころか、彼等のしていたことを全部君達が隠してしまいました。だから、僕的にはあまり、歓迎しない気持ちがあるんです。だけど、君達には君達の目的があって、君達の信念で行動した結果だから、仕方なかったのだと、そう納得しました。お互い、信じるものがあって行動した、その結果なのだから、良しですよ。」
「なんで・・・」
「それに君は、どことなく昔の馴染みに似てますね。」
「はぁ?」
合点がいかない一護に
「とりあえず、しばらくゆっくり休んでください。それじゃ」
一礼をして去っていくに、
「俺は・・・あんたの動きを散々邪魔した。あの藍染とかいうヤツをあんたは止めようと動いてたのに・・・」
「いいんです。それよりも今はゆっくり休んでください。君が今やるべきことは、ゆっくり養生することですよ」
それだけを言うと、が消えた。
 
 
 
 
 
 
 
松本が酒を片手に酔いつぶれている。
というかこの女、酒癖悪い・・・
「僕に絡まないでくださいってば!松本副隊長!」
泣きそうな声でが叫ぶ。
コイツ、本当に零番隊隊長か?
って少し疑いたくなるな・・・
ったく。
それにしても、信じるもの・・・か
『改めて隊舎を立てたり、なんかするのってどこか大仰じゃないですか?』
『だけどてめぇ、隊長だろう?』
『そりゃそうですけど・・・もし、隊長さえよければこのままでもよろしいですか?』
『なんでだ。』
『己の信じるもののために』
その時の、あの目。
恐らく一生忘れられそうにねぇなぁ・・・
だから、『いいのか?』と、そう言う他なかったんだ。
『はい。山本も、それでいいかな』
『構わん。全く、お前の頑固さは百も承知しておるでの』
『ありがとう』
あのときの、ふんわりとした笑顔は、嘘じゃねぇはずだ。
『ただし・・・』
 
 
 
 
 
三席、しばらく頼むぞ」
「わかりました」
 
どさくさに紛れて、ヤツを三席にした。
これも、俺が信じるものってやつだ。
悪く思うなよ?
アトガキ

藍染たちのことが終わって日番谷たちが人間界へ行く直前あたりまで・・・ですかね。
Bleachの尸魂界主人公は,どちらかというと本編に沿ってはいるんですが,ちょっと別の動きをさせてますので。そのあたりご了承いただければ・・・と思います。
それにしても,四十六室直轄部隊にするつもりは無かったんですが,今回藍染が・・・動いてしまって,面白そうなので訂正しませんでした。
尸魂界主人公,ちょっと年くいすぎ?ですが,外見は16・17の少年なのです。
2023/07/21 CSS書式修正
管理人 芥屋 芥