「ねぇサン?大丈夫ですか?」
そう声を掛けてきたのは、布団に突っ伏してる俺に対しての嫌味か?下駄帽子!
「そりゃなぁ・・・あんたにあんなことされりゃ、動けなくもなるだろうが!」
半ば脱力した声音でそういう。
「それは失礼〜でも、サンも、随分いい思いしたんじゃないんですか?」
「あんたなぁ・・・」
いけしゃーしゃーとそうぬかす下駄帽子にキッと視線を送ると、
「そんな顔されても、ワタシには怖くもなんともないんですが?」
扇子を軽く仰ぎながら、着流しを着て俺の足元に座っている下駄帽子は、軽く笑って見せた。
 
 
こ・・・こいつ・・・いつか絶対シメル
 
 
「で、なんで俺なんだ、浦原さん」
布団をもそもそと動かし、肩口までもってくると、軋む体をなんとか動かして下駄帽子から背を向けた。
「そりゃねぇ・・・色々ありますから」
そう言ってはぐらかす下駄帽子に、『ま、どうせ気まぐれなんだろう』
そう勝手に解釈する。
 
 
事の発端は、この商店の前でぶっ倒れたこと。
少し寄って浦原さんと話をして、それだけで終わるはずだったのに・・・
前にも倒れたことがあったけど、あんな感覚は初めてだった。
なんというか、体の内側から何かが爆発するような感じ。
慌てた浦原さんが俺を抱えて部屋で寝かせてくれたんだけど・・・
戯言の中に
それにしても、最近の俺は変だ。
 
体はよくふらつくし、なによりこの頃変な物体、例えば空飛ぶ何か・・・得体の知れない物体を見たりとか、胸に穴の空いた変な物体とか。
最近目の端によく写すようになった。
きっと、その辺りのことは浦原が知ってるだろう・・・
「って、なんで俺下駄帽子のこと、「浦原」って呼び捨てにしてるんだ?」
「さっきから何ブツブツ言ってるんですか?キチンと聞こえるようにいってください」
そう言って、被さってきた下駄帽子に視線を向けると
「なぁ浦原さん。俺、あんたのこと呼び捨てで呼んでたこととか、あったか?」
と、聞いていた。
なんか・・・
ダメだと、心の中で何かが叫んでる。
『そういうことは聞くな』と
懐かしいようで、聞いたことのない声が
 
ま、俺の周りにはこんな澄んだ声のヤツなんていやしないから・・・きっとどっかで聞いたんだろ
などとぼんやり考えていると、唇が触れるか触れないかの微妙な距離に下駄帽子がいたけど、スッと体を引き、空気が硬くなった。
「なんで、そんなこと考えたんですか?」
俺、もしかして地雷踏んだか?
「いや・・・なんとなく・・・だ・・・うわぁ」
「なんとなくでも、そんなことは言わないでください。」
「そんなことって、どんなことだよ!」
抵抗しようにも、さっきの倒れたときのダメージがあって体に力が入らない。
「だから、そんな・・・昔のこと思い出させるような言葉なんて・・・ワタシはあなたの口から聞きたくないんですよ」
昔?
ちょ・・・ちょっと待てぇ
昔ってなんだよ、昔って。
俺、あんたなんか知らねぇぞ?
 
サン、何故最近サンに対するあなたの力が安定してないのですか?・・・それとも、封印刀を持つあなた自身に何かあったんですか?)
不安になる。
尸魂界で何が起こっているのか。
あの義骸が、尸魂界に戻った。
あれの利用価値はいくらでもある。
特に・・・
そこまで考えて浦原は首を軽く振った。
夜一サンもついてるし、黒崎サン達がうまくやってくれることを、今は願うしかない。
その過程でもし、あの人がそれを解いてしまえば、サンの記憶や力は全て戻るんでしょうケド・・・
 
『もし、何かあれば僕はの封印を解くよ?それでいいかな、浦原さん』
 
去り際にサンが言った言葉が蘇る。
あの時は『随分勝手なことを言いますね』と言ってしまったけれど、今のワタシもあの時のサン、あなたと大差はない。
黒崎サン達を利用・・・しているのだから。
「・・・い。おい!」
バチン
と軽快な音を立てて叩かれたのは、ワタシの頬。
目の前には、サンの不機嫌な顔・・・
「重いんだよあんた・・・どいてくれ」
そう言うサンの顔は、どことなくワタシの欲を誘う。
スッと手を顎に添えて上向かせると、なんなく唇を奪うことができた。
 
 
「ちょ・・・ちょっと浦原さ・・・ん?」
着物中に手を入れて、胸元をまさぐってみる。
途端サンの体が反応した。
その場所を、指先で軽く撫でると今度は顔が少し歪む。
 
 
「ワタシのこと、『喜助』って呼んでくれますか?」
昔のように・・・
「ヤ・・・メロ・・・浦・・・原・・・さ・・・」
「喜助だって、言ったでしょう?」
あなたは、知らない。
ずっと、あなたが呼んでいた名前だということを。
夜一サンを除けば、その名前で呼ぶことを許した唯一の人。
「・・・・・・喜助?」
熱に浮かされた戯言の中に、はっきりと聞こえたワタシの名前。
それがどれほど嬉しいか。
サン、あなたには分からないでしょうから。
 
 
分からせてあげますね?
アトガキ

結構ソフト系?
浦原さん,とうとう・・・ねぇ
抑えること放棄した?
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管理人 芥屋 芥