About Death Way
TheDefense
ここに戻ったときは、ハッキリ言って無我夢中で自分で何をやったのか自体、よく分からなかった。
ただ。
君!!」
そう・・・叫んだと思う。
でも、目の前がその瞬間真っ白になった。
『虚』という人たちの何か・・・彼ら風に言うなら、「霊圧」というものを食らったのかと思った。
でも、違ったらしい。
驚いて慌てて目を瞑って、でも、何も感じないことに不思議に思い目を開ける。
・・・多分、ここ最近は見慣れた風景。
海のど真ん中。
そして、相変わらず空中に浮いている自分。
「あ・・・あの・・・ここ・・・」
そんな間の抜けた言葉しか出てこなかった。
でも、どうやら状況は切迫しているようで、下を見ると波が荒い。
『さて、。お前は、どうする?』
そんな声が下から響く。
いや、ここの空間全体から響いてるような、そんな雰囲気だ。
「どうするったって・・・
 あー・・・俺、そういえばまだ決めてなかったんだっけ。
 あんたの名前、聞くかどうか」
――斬魄刀にはそれぞれ名前があって・・・
彼からの申し入れを、最初は断った。
自分が『普通』とは違うものになってしまうのではないかという漠然とした不安。
自分が『自衛官』ではなく、何か他の物へと逸脱してしまうのではないかという不安。
案外俺は小心者なのか?という自嘲もある。
でも今はそんなことを言ってる場合じゃなさそうで。
『護る』
か。
何のために自衛隊に入ったんだ?
何のために護衛艦に志願したんだ?
確かに戦争はできない。
そりゃ確かに自衛隊は専守防衛のための組織だ。
でも・・・
一人守るのも、国を守るのも大して違いはない・・・と思う。
そりゃ確かに組織の中にいれば、余りにも日本は大きすぎて・・・
でも・・・
君を一人でも見捨てれば、この先・・・俺は・・・
ッ・・・!
『・・・腹は括ったか?
見透かしていたような男の声が、真正面から届く。
「・・・ここで君見捨てたら、俺はこの先自衛官としてやっていけない。
 そんな気がする」
一瞬言いよどんだけど、でも、それでもえらく自分勝手な理由だな・・・
と自分でも思う。
でも・・・ここで彼を見捨てたら、きっとこの先後悔する。
そう、思った。
だから・・・
 
 
 
「あんた・・・名前は?」
まるで、旧知の仲に問い掛けるような、そんな調子ではいつの間にか目の前に姿を現していた男に聞いた。
目の前の男の風貌は、まるで昭和初期の頃の漁師のような格好をしていて、まさに海の男そのままを形にしたような、そんな精悍な男だった。
「儂か?
 儂は・・・」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
戻ってきたのは、霊圧で直ぐに分かった。
それにしても、こんな雑魚相手にココまで長く持ち堪えさせた自分の気の長さに正直は半ば自分に感心していた。
普段の地の自分ならば、こんな面倒なことは一切しない。
それにしても、まさか逃げ出すとは、ちょっと予想外に反していたけれど。
もし戻ってこなければ、ここにいる虚たちを無理矢理にでも彼のもとへ飛ばそうと考え初めていたところへ、大声で自分の名前を叫びながら戻ってきたの顔は(心の中はどうであれ)場違いな安堵の表情を浮かべていた。
――主上・・・
と、斬魄刀である森羅光玉から呆れとため息の混じった声が響く。
『さてと・・・どうなるかな』
心の声でその声に答えると、斬魄刀は呆れ返った様子で
――楽しんでますね・・・完全に・・・
と言った。
『だって、久しぶりの直接死神化だよ?
 いくら素質を持っていたとは言え、ここまで短期間で為れる人間は、ほとんど今まで居なかったんだから』
と言って、斬魄刀に対してニッコリと笑う。
――後悔しているのではなかったのですか・・・
『・・・森羅光玉』
どうやら、禁句を言ってしまったらしい。
自分を呼ぶその声には、絶対零度の冷たさがあった。
ここは素直に謝っておくべきか。
だがそれをさせまいとしたのかしないのかは分からないが、が次の言葉を言う。
さんの斬魄刀は、彼に名前を教えたくて仕方なかったようですし。
 まぁ・・・さん自身こっちに来たら、こちらからスカウトできる人材だったことは確かですからね。
 順番は違うけど・・・まぁ、いいんじゅないかな』
と、普段見せるのとは違う、別の種類の穏やかな表情での声のする方へと顔を向けた。
あの斬魄刀は、さんに既に降伏している。
彼の生き様、意思、そして何より自分と同じ『海』に近いところにさんが進んだこと。
嬉しかったでしょうね。
無意識とは言え、近いところに彼がいてくれることが。
自分の存在に無意識に気付いてくれるさんのこと、彼は気に入ってるようですし。
もしかしたら、一気に卍解まで行くかもしれませんね。
――まさか・・・
信じられないという様子で、斬魄刀が答える。
「ド・・・ドコ・・・見てやガル」
馬鹿にされたと思ったのだろう、虚の中の一体の腕が振り下ろされる。
だがはそれに顔を向けることもなく真っ直ぐにこっちに向かってくる彼、から目を離さなかった。
――主上?!
斬魄刀が珍しく慌てた声を出してを呼ぶが、それでも彼は動じることなくニッコリ笑って
『大丈夫、間に合うよ』
と言った。
 
 
自然な動作で、走ってきたが腰にある刀を抜く。
そしてその首には、ここには存在しえない現世の物があった。
それは彼が現世から来た人間であるという証拠。
それは彼が自衛官であるという何よりの証明。
そして護衛艦乗りであるという、確固たる証。
たかがヘッドフォン。
だけど、それは普段『在る』場所が全く違う物。
それを首に提げ、走りながら刀を抜いたが叫んだ。
「開けろ!潮止!!」
その瞬間、斬魄刀が消えた・・・かと思った。
「っえ!?」
一番驚いたのは何を隠そう自身。
だけど、を襲おうとしていた虚は完全に跡形もなく消えていた。
――無意識・・・でしょうか?
と、の様子を見て森羅光玉がに尋ねる。
は静かに首を縦に振った。
「彼自身は・・・ね。
 どうやら、水液系の斬魄刀のようです。
 さて、忙しくなりますよ。」
と、静かに言った。
アトガキ
『潮止』しおどめ・・・です。ひねりがなくて申し訳無い・・・orz
2017/07/20 書式修正
2007/10/18 up
管理人 芥屋 芥