About Death Way
Microphone
「今日は、少し散歩でもしましょう」
といわれ、前を歩く君の後ろを黙ってついていく。
それにしても何故昨日は酒などに手を出したのだろう。
と、はそのことを考えていた。
普段、士官仲間で飲むときは絶対に手もつけないハズなのに・・・
なんで手を伸ばしたんだろう。
あの松本さんの勢いに圧されたから?
それとも自棄になっていた?
はたまた何か別の意味があるのか?
あるとしたら、それは一体なんだ?
 
 
 
 
「・・・さん、さん?」
いつの間に考え込んでいたのか、しばらく君の声に気付かなかったようで、声のする方に視線をやると、不思議そうにを見ている視線と目が合う。
「あ・・・ごめん。ちょっと、考え事して・・・た・・・って、ここ・・・どこ?」
何も考えずに君の後ろを歩いてきたけど、なんか・・・さっきと景色が全然違うから、少し戸惑う。
さっきまでは街があって人も沢山居たはずなのに・・・
今居る場所は、街があるどころか、人の気配がほとんどしない。
尸魂界というところにも、こんなところがあるのか・・・
そういえば、確か地区ごとに治安がいい所と悪いところがあるっていう話だったっけ。
それにしても、いつの間に?
と、半ばボンヤリ考えていると君が振り返って
さんって、やはり実戦向きだと思うんです。
 それに、二日後にはもう現世に帰らなければならないでしょう?
 なので・・・虚たちに協力してもらいました」
と、ニッコリと笑って言った。
何?
なんて疑問を挟む余地もなく、彼は目の前で何かビリビリするような気配(もの)を『広げた』んだ。
「なッ・・・!?」
驚いて、それ以降言葉が出なかった。
目の前の君から今まで感じたとこがない、ビリビリとした威圧感を感じる。
それが余りにも大きくて、の目には彼の体が一回り大きくなったように『観えた』
時間は一瞬だったと思う。
でもにはすごく長い時間のように感じた。
それほどのプレッシャーだったのだ。
穏やかな今までの彼からは考えられないくらいの。
信じられなかった。
これほどまで豹変するものなのか?・・・と。
「あ・・・あの・・・」
今まで彼の名前の方で呼んでいたのを改めたいと思い苗字を呼ぼうとするが、直ぐには出てこない。
ようやく名前が出てきたのは随分経ってからだった。
「えっと・・・・・・さ・・・ん・・・」
「急に改まられても・・・その・・・照れくさいんですけど。
 あ、大丈夫ですよ。弱いと思える虚さん達を捕獲して、呼び寄せただけですから」
と、何でもないことのように言うが・・・それって・・・
『虚』というのは、確か・・・その・・・マイナスに落ちた彼らが言った・・・襲ってくる人たち?
それを『集めた』?
それって・・・どう判断したらいいんだ?
迷いに迷って、結局目の前にいる銀髪の少年に聞こうとしたら、なんだかイヤな声が聞こえた。
まるで、獣のような声が・・・
「あ・・・あの・・・」
「大丈夫です。
 刀、構えてください」
と、ニッコリ微笑まれて、逆に固まる。
そんな・・・そんな殺生なこと言うな!
そう思いつつ、刀に手が伸びる。
ここは・・・そういう場所・・・
コレ(刀)、法には触れないんだろうか・・・
ぶっちゃけハッキリ言って銃刀法・・・違・・・は・・・
ん!?
「うわぁぁ!!」
いきなり目の前に来たその・・・見た目がちょっとアレな虚さんに驚く。
うわぁ・・・なんか・・・ちょっと・・・格好・・・ヘン・・・
なんて頭の片隅に思っていると、いきなりきた衝撃波。
「ちょっ・・・!っと!タンマ!!!」
多分、艦の中でもこんな声出したことないだろうと思う大声で、相手に向かって叫んでた。
だけど、相手はそんなこと気にもしないで、二撃目!
「ちょ・・・っと・・・あの・・・待てって!!」
それを何とか避けながら、相手に向かって言ってみる。
言葉が通じるかどうかは分からなかったけど・・・元々人間なら・・・理解くらいはしてくれると思うから。
でも、相手はそんなこと聞いてないようで・・・
「うわぁぁぁぁ!!!」
近づいてきたから、全力で逃げた。
 
 
 
あら・・・
いきなりは流石にキツカッタ・・・でしょうかね。
などと思いながら、は目の前にいる虚に対して斬魄刀を振った。
これでも、弱い虚だけを集めるの、苦労したんですけど・・・
強い虚が引っ掛かれば、結界の設定上入れなくしたり・・・とか。
う〜ん・・・
仕方ないですね。
久しぶりに『やられ役』でも演じましょうか。
 
 
 
 
 
無我夢中で走っていると、後ろで悲鳴が聞こえた。
その声を聞き、思わずの足が止まる。
そう言えば君は?
まさか俺・・・置いてきた?!
と一瞬焦るが、
でも・・・彼は・・・その・・・この『死神』というのが『職』だとしたら、彼は本職だし・・・
と、頭の冷静な部分がそう判断する。
でも・・・いいのか?
そりゃ、市丸や松本さんが発端とは言え、無理矢理とは言えここ尸魂界というところに来てからは何だかんだ言って俺、楽しかったんじゃないのか?
それに君には・・・
一番世話になってるし。
いくら隊長さんの命令だったとしても、果たして自分はできるだろうか。
そう思った時、袖のところに何か入ってるのには気付いた。
ん?
不思議に思って袖の辺りに手を入れて探る。
カチャ・・・
聞きなれた音。
恐らくこの尸魂界には無い、艦内マイク。
いつの間にここに?
そう思うが、いつ自分がそこに入れたのか、思い出せなかった。
それにしても、なんで今まで気付かなかったんだろう。
そう思い、取り出した艦内マイクを見つめる。
艦内マイク・・・
俺があの『みらい』に乗っていたという、今ここ(尸魂界)での証拠。
服は検疫だとかで、着いたその次の日に持っていかれたから、現在手元にあるのはこれだけだ。
カチャ・・・
聞きなれた、そして、付けなれたソレは、今あまりにも重い意味を含んでいた。
これは、自衛官であるという、証拠。
自分の進んできた道の証。
自分は、自衛官だ。
『軍』という言い方はできないけれど、それでも・・・『守る』ために志願したんだ。
――守る・・・か。
目の前に広がる海。
デッカイものを守るのも、目の前助けを求める人を守るのも、同じ。
自分はあの時、助けられた。
それに、行政は隠したがっているようだがそれでも、あの時助けてくれたのは自衛隊の人間だった。
ただあの時は梅津艦長の采配とかあってできたことで・・・
普段シビリアンコントロールが絶対の『軍隊』にあって、勝手な行動は許されない。
だけど、今は・・・違う。
 
『つまり守るものが違えど、やってることは同じ。脅威に対する・・・兵力。そういうことだろ?
不意に響いた菊池三佐の言葉。
『彼らは、俺たちを含んだ全ての人間を守る。
 俺たちもまた、生きてる人間を守る。
 流石に死んだ人間までは無理だけどな』
記憶にない言葉だけど、多分これは俺の記憶の中の尾栗三佐だ。
がんばってこい

あの時、置手紙に書かれた最後の言葉。
頑張る。
何を?
・・・分からない。
けど・・・
グッと艦内マイクを握る手に力がこもる。
そしてはそこからまた全力で走っていった。
今度は、ここまで来た意思とは全く違う決意を持って。
アトガキ
久しぶりの三羽登場(主人公の心の中だけ)
やっぱり,主人公はどこまで言っても自衛官なんだなぁと,思いました。
2017/07/20 書式修正
2007/10/17 up
管理人 芥屋 芥