About Death Way
Feel Jelled,yet
「それで、君はどうするんだい?」
西流魂街というところの長老の家で眼鏡をかけた五番隊の隊長藍染さんが、俺の真正面に座りお茶を飲みながら聞いてくる。
流緯君はというと、違う隊とは言え隊長である藍染さんに遠慮してか、戸口のところで立ったまま俺と藍染さんの話を聞いていた。
俺はというと、そんな二人に半ば挟まれた形で居間に座り、藍染さんと同じく差し出された湯のみを手に、それをジッと見ながら言われたことへの返信を 考えていた。
うーん・・・
どうするって言われても、市丸が勝手に俺を賭けの対象にしてしまった結果、俺がここに居るという事実には変わらない訳だが・・・
だが、それでこのまま中途半端な状態で上陸・・・いや、帰投・・・違うな・・・ま、このまま戻るとあの上官三人に何言われることやら。
それも理由としては有るにはあるが、それ以上に、何とかここまで来たんだ。
少しずつだが、あの男の声も大きくなっている気もするし、一応次の仕事までは休みがある・・・
と、一瞬で考えた頭が出した結論は、
「残ります。なんだかここで帰ってしまうと、自分自身どこか中途半端な感じがしますし。大丈夫ですよ。
 まぁ彼市丸に、今度もし会う事があれば、その時はもしかしたら何か言うかも知れませんが・・・だけどそれ以上に、こんなところに来る経験なんて滅多に無い・・・というより、無いことですからね。」
それを聞いた藍染さんは人の良さそうな笑顔で
「そうか。なら、君。後は任せたよ?」
と藍染さんが言い流緯君が
「はい」
と答えると、彼はその場から一瞬で消えた。
相変わらず、凄い動きだ。
と、は感心する。
あんな動きは、『人間』じゃできない。
正しく彼等は『人ではない』ということか、という思いが頭をよぎる。
そして今は、自分もそうだったな・・・ということも。
そうだ。
え?
それを最後に、引きずり込まれた。
 
 
 
 
――藍染が、こちらの様子見のためだけにここに来るとは思えません。
藍染が帰った後、そう言ってきたのは斬魄刀の森羅光玉。
――さんの反応を楽しんでいた・・・
それは違うよ、森羅。
あれは・・・鏡花水月の催眠の儀式だ。
――では・・・
そう言ったきり言葉が出ない彼に代わり流緯が言う。
そう。
今後、彼さんは藍染の催眠に掛るということ。
そして、今回彼が来たのはただの様子見・・・ということでいいんじゃないかな。
それにしても、『市丸』と思い込ませて接触しようとするなんて、中々に手間がかかることをするものですね。
そう言うと、流緯は少し笑った。
その笑顔に逆に不安になった斬魄刀が問う。
――藍染は、ここの初期の初めの頃のどの辺りまで知っているのでしょうか。
   主上、私は・・・
森羅、あまり真面目に気を使いすぎると、いつか倒れるよ?
と、それを遮る形で流緯が言った。
それに少し言葉が詰った彼だったが
――私は、あなた様のように不真面目には生きれません・・・
そう。
私は知っている。
この人は、見かけから考えられないくらい、不真面目だ・・・ということを。
そして、その雰囲気からは想像がつかないくらいの好奇心を持っているということを。
先日のあの船の中にしたってそうです。
足の向くまま、気の向くままに、自分の行きたい方向へと足を向ける。
糸の切れた凧のような、そんなフワフワとした人だ。
だからこそ、気の向くままに生きているように見せて本当はしっかりしている彼を、自分の部下に指名した。
森羅光玉、それ以上は・・・
――分かりました。主上

 
 
 
 
 
さん、続き・・・やりますか?」
と藍染の気配が消え、しばらくしても動かなかったので問い掛けてみたのですが・・・
疲れたのでしょうか、少し眠ってしまったようで、座ったまま目を閉じていました。
しかし、霊圧は・・・
対話している?
直ぐに何が起こったか理解した流緯が、の霊圧を今度は本格的に探る
そして
「このままにしておきましょう」
と、柔らかい表情のままそう言うと居間に上がり正座をしてから、長老が出してくれた湯のみに手を伸ばし、それを飲んだ。
 
 
 
 
 
いつも、来るたびに思う。
ホント、一面海ばっかりなんだな・・・
と。
まるで、自分の乗っている艦・・・みらいが出港し、ぐるっと360度海になったときのような・・・そんな景色が広がっている。
そして、今自分が立っているのは、その波の上だということ。
つまり、浮いている。
通常ならば驚くところなのだろうがしかし、過去何度か来たことでいつもの日常では考えられない状況に、少々は慣れ始めている。
というよりも、本来ここは・・・
そんなことを考えた時だ。
「そろそろ、ここも変わるぞ」
そんな声が、響いた。
自分の声ではない。
「あぁ。あんたか」
そう、ここに来るたび・・・いや、横須賀の公園でこの声を聞いて以来、ずっとどこかで聞こえていた声。
、お前が儂の名を呼べば、ここは劇的に変わる。」
そう聞くと、彼は意外そうな顔をした。
「変わる?どう変わるんだ?」
と。
「お前は、前に一度本当の儂と会った。
 その時お前は無意識に儂が名を見たはずだ。思い出せ。」
すぐ、そこまで来ているというのに、この男はその手を伸ばさん。
来て直ぐにこの海の上に立ち、溺れた後もこの世界を支配したにも関わらず・・・だ。
無欲なのか、それとも無意識に死神の方へと踏み込むことを拒んでいるのか・・・
いや、ずっと見てきたの性格では、顔も見えない『誰か』の為ならという意識が強いように思える。
そしてその、後一押しを、あの男が何やら企んでいる感があるが・・・
ならばそれではそれで、そこに乗ればすむだけの話。
儂から名を教えても良いが、こやつが望まねば意味はないからな。
ならば、望まれるまで儂は待つ。そういうことだ。
「儂の名を思い出したか?
そう問うと
「いや・・・ごめん。覚えてない。ただ、かすかに覚えてるのは、門があったってことだけで、それ以外はちょっとな」
と、申し訳なさそうな声で返答が返ってくる。
「そうか」
だが、お前が見たその門こそが、ここの海を束ねる存在。
その門の名前こそが、儂だ。
今あるこの海は、の自然な霊力そのもの。
まとまりを知らず、流れるだけの霊力そのものだ。
お前が来ないから、こんなにも溜まってしまった霊力で、いい加減儂もその霊力のこもった水圧で圧し潰されそうになっておるからな。
儂も何時まで保つか分からん。
その責は、重いぞ?
 
 
「最初は始解があって、次に卍解というのがあるっていうのは、流緯君から聞いた。」
海に足をつけて話す。
自在に移動できるようになったか。
「そうか」
「でも、俺自身が全然踏ん切りが付いてないから、あんたから名前は聞けないし、聞きたくない。
 だから、まだ、聞かない」
そう言うと、世界がシーンとなった。
風の一つもそよがないし、波の一つも立たない。
そして、一気に引き戻された。
アトガキ
尸魂界主は結構不真面目
2017/07/20 書式修正
2007/05/08 up
管理人 芥屋 芥