「へぇ……やっぱり連れて来たんやなぁ」
と市丸が言う。
「何言ってんのよ。あんただってあの時は熱くなってたくせに。」
酒瓶を持って、松本が言う。
「ん?それは乱菊やかって変わらへんやん?なんや、「私が先に見つけてやる」言うて息巻いてやん」
「はぁ……」
それにため息をつくのは日番谷で、
「まぁまぁ。四十六室も、今回は大目に見てくれてるようですし、良かったじゃないですか。」
と言うのは吉良だった。
瀞霊廷にある居酒屋で、三番隊と十番隊の隊長・副隊長が飲んでいる。
なんだか異様な組み合わせに、店の中は主人とこの四人しかいなくなっていた。
(さっさと帰りてぇ……)
そんな思いとは裏腹に、話はどんどん進んでいく。
「大体あんたが言ったんじゃない。人間から直接死神になれるのかって。忘れたとは言わせないわよ?ギン。」
そう。
話を切り出したのは、市丸の方だった。
その話に松本が酔った勢いで乗り、そしてそのトバッチリを食ったのが、俺や吉良、そしてこの場にはいないがだったって訳だ。
全く。
なんでか知らねぇが四十六室までこの事態のことを知ってやがったし。
大体なんであそこが、どうやって死神同士のこんな些細なやり取りを知ったかは謎だが、(どこかに監視カメラか何かがあったのか?それとも間者か草でもいたのか?)兎に角数日の間に現世に探索に行って来いっていう命令が下った。
それによって市丸と松本は現世に下り、俺は市丸から吉良を借りて(というより無理矢理市丸が押し付けていった、が正解だ)業務をこなし、んでもってこっちからは、何故か市丸がを貸せって言ってきた。
まぁ、そんなこんなで連れてこられた、といっても連れて来たのは俺……あの男。
名前は
年齢は今年二十八……だから現在は二十七ってことだな。
職業は海上自衛官。艦艇勤務。
一通り調べた資料をめくって文字を追っていく。
次の仕事が始まるのは……一週間後?
どうやら、次の出港の前準備っていう仕事らしい。
こりゃ時間がねぇぞ。
現世でがどこまでやったかは見当つかねぇが、まだ死神にはなってなかった。
「それにしても、なんで十番隊で預かれなんて……四十六室も理不尽やわぁ」
などと市丸がごちている。
「何言ってんのよ。負けた方が預かるっていう約束だったでしょ?それともそれは忘れたのかしら?」
とこれまた松本が応戦する。
「まぁ、せやね。それにしても十番隊隊長さん君を貸してくれてありがとうなぁ。お陰で話が早く済んだわ。ほな、僕はもう出ます。行くで、イズル。」
「あ。はい」
と言って吉良を連れ立って店を出ていった。
「全く。調子いいんだから。あれ、隊長それ……」
カウンターから座席に席を移して、松本が俺が台に広げていた資料に視線を移して言った。
「へぇ。彼の資料じゃないですか。調べてたんですね。」
と、肘をついて言う。
「まぁな。ま、市丸が見つけてきたっていうからどんな野郎かと思ってたら。現世における俺たちみたいなことをやってる野郎だとさ。」
そう言って資料を松本に向ける。
渡された松本はパラパラとめくって「ふーん。なんだか防人みたいな仕事内容ですね」と言った。
「ま、が面倒みてるし、あとはなんとかなるだろう。」
と言って席を立った。
「というより、何とかするんでしょ?隊長」
その言葉には返答は返さなかったけど。
あのあと、隊舎への道を歩いていると、後ろから声が掛って振り返ると
「阿近、ついでにこれも……」
そう言ってが来た。
なんだかヘッドフォンのような、それでいてインカムがついた妙なものを渡された。
「これは?」
と聞くと
「ついでに検疫してくれると助かる。多分、あの人にとってすごく大事なものだと思うから。」
そう言って笑う。
「現世で何があったんですか?」
事情はわからない。
だが、なんとなく三番隊と十番隊が動いて何かやってるらしい。
が、そんなことは俺にとっては興味がない。
興味があるのは、この人の本当の霊圧の強さについて……だから。
「ちょっとね。色々こっちにも事情があるってこと。じゃ、あとはよろしく。くれぐれも改造はするなよ。」
といって元来た道を戻っていった。
全く。
しないっつってんのに、信用ねぇなぁ……
ま、いいか。
そう自分に納得して、阿近は再び隊舎への道を歩いていった。