About Death Way
QuietNightPark
「彼らは虚という、人間が……何ていうんでしょうね、彼らは『落ちた』といってましたけど、そんなモノたちを退治してました。つまり、悪霊ってやつでしょうか。」
そう言って、さっき尾栗から受け取った缶茶を一口飲んだ。
 
 
 
 
 
自分が感じた大筋を粗方話し終えると
「つまりその虚ってやつは、根性がねぇってことか」
と、尾栗三佐がいった。
「根性って……」
呆れたように言うのは菊池三佐だ。
「つまり、妬んで恨んで死んで、結局成仏できないってことは、根性がねぇってことだろ?」
「一概に妬みや恨みという訳でもあるまい。急に事故で亡くなった場合は、未練とかもあるだろうしな。」
「ま、死んでから迷惑かけるという点においてはそう大して変わりはないだろう……しかし、お前その『虚』って奴を見たことあるのか?」
そう聞いてきた角松二佐。
「実は、最近二度ほど。最初は市丸の時、次に君の時……それぞれ一回ずつでしたけど。」
そう言うと、尾栗三佐が口笛を軽く吹いた。
「それってつまり今回の帰路ってことじゃねぇか。お前よく無事だったなぁ」
「尾栗、それを言うならよく帰ってこれた……だろ?」
その時だった。
「ん……」
彼が目を覚ましかけたのは。
動こうとした尾栗三佐より先に俺が動くと、
「大丈夫?」
と声を掛けてから
「少し、風に当たらせてきますね。」
と缶のお茶を二本持って部屋から連れ出した。
こういうことは、昔から役割というものが決まっている。

 
 
「大丈夫?」
外の風に当たって、それでも少し青ざめている君に声をかける。
「あ……はい」
そう言うが、まだ酒が残っているのだろう。
足元がフラフラだった。
「ちょっと担ぐよ。」
と言って、近くの公園まで背負っていく。
ドア越しに三人がいたのを見逃してはいなかったから、離れたほうがいいだろうと判断したのだ。
それにしても、銀の髪が首筋に当たって少々くすぐったい。
こういうことも、何度経験したか。
飲みの度にいつも誰かがリタイヤする。
その度にこうして介抱してたっけな。
と、自分が曹だった頃を少し思い出した。
最初が最初だったから……余計に後始末部隊に入ってたっけ。
今じゃほとんどしなくなった介抱作業を、少し懐かしいと思った。
背中に君の体温を感じながら、夜道を歩いていく。
年の離れた弟がいたら、こんな感じかな。
と、柄にもないことを考えながら。

 
 
公園のベンチの上に彼を寝かせる前に
「とりあえず、吐きたかったら水場に持っていくけど?」と言って返事を待った。
それには流石に首を横に振って答えたけど、それでも顔は青いままだった。

「大丈夫か?」と言って持ってきた缶茶を差し出すと力のない手で受け取った。
「座れる?」
と聞いて、頷くのを確認するとゆっくりと体を起こしてやる。
こう言うときのコツは、胃に負担をかけないようにあまり背中を丸めさせないこと。
かといって不自然に背筋を伸ばさせてもダメ。
自然に起こすのが一番だったりする。
だが、これが結構難しい。
「もう一本あるから、気分が悪くなったら言って。」
と、ベンチの隣に座る。

「まさか、あれほど飲まされるとは……思わなかったです」
お茶をゆっくり飲みながら君が言う。
「だから言ったろ?『多少』じゃ飲めるうちには入らないって。それにしても、最初に絡むなって言ったのに……あの三人ときたらそれマルッキリ無視するんだもんな。参ったよ」
そう。
最初に言った言葉など、途中から既に放棄されていた。
酒の匂いに一瞬目を離した隙だった。
こればかりは、自分の失態だとそう思う。

その言葉に、は自分が彼に「そういう意味」で守られていたのだと気付かされた。
恐らく、さんには自覚はないのだろう。
だが結果的に、自然な形で彼は僕を守っていた?

 
 
二本目のお茶を飲み終えたときには、少し体が楽になっていた。
あと、気持ちも。
それに、なんとなくさんの霊圧から海のような暖かさを感じる。
あぁ……そうか。
彼に呼応していたのは、海だったんだ。
と、この時初めて気がついた。
自身に掛けた封印のせいか、霊圧を探れなくなっている。
その分を斬魄刀である森羅光玉がサポートしてくれるのだが……
彼だってそう正確に読み取れるわけじゃない。
それに、現世にくることによって元々弱い霊圧が更に小さくなっているから掴めなかったのか。
と、心の中で納得した。
と同時に、あのとき助言をしてくれた斬魄刀にもお礼を言う。

トサ……
右肩が急に重くなって、
ん?
と思って視線を向けると、銀髪の髪が目の前にあった。
君?」
そう声を掛けるが、返事はなかった。
どうやら本格的に寝てしまったようだ。
ま、確かに酔ったときには寝るに限る……か。
それでなくても、恐らく彼はそういつも酒を飲んでいるような人じゃなさそうだし。
「疲れたんだな。」
と言った。

その言葉は、独り言になるはずだった。
夜の公園。
微かに漂う潮の香りに、遠く見える護衛艦の光。
そんな中の、誰もいない公園……のはずだった。

 
 
 
 
『癒せるのも、お前の役目。そうだろう?

アトガキ
「守る」とは言っても、三羽にだって悪気はありません。
いつもの調子で飲ませたけです。
補給長が絡むなって言ったのは、結局自分が介抱しなければならなくなるのは目に見えていたからで。それが面倒だなぁという……
酷く利己的な思いからなんですが、モノは言い様でどうとでもなるという、ある種「大人」な言葉の使いようを知っている、それだけなんですよね。
2017/07/20 書式修正
管理人 芥屋 芥