About Death Way
Unnecessary thing...
「なぁ雅行。最近……の様子……おかしいと思わねぇか?」
 切り出したのは、尾栗だった。
 観察眼の高い尾栗は、どうやら真っ先に気づいていたようだ。
 だが、何かあれば相談しにくるだろうと思っていた、切り出された相手は
「ん?」
 と、一度はとぼけてみせる。
「だから、だよ。。最近妙に小言が多いっていうか、まるで何かがそこに居るみたいに喋っててさぁ。ちょっと様子、変なんだよなぁ」
 と、更に言い募ってくるから
「そんなのは本人に聞いたらどうだ? 今は当直明けで自室にいるだろう?」
 と少し促しておいた。
 それが、まさかあんなことになるとは、まさかの菊池も予想できなかったけれども。






「よ、ちょっといいか?」
 そう言って入ってきたのは尾栗三佐だった。
 そうだよなぁ……観察眼がいいこの人を欺こうなどできないんだっけ……とは観念しつつ、ベッドから体を起こした。
「休んでるとこ悪いんだが、最近というか、ここ二・三日様子がおかしいがどうかしたのか?」
 と、彼は単刀直入に聞いてきた。
『……なんでもないです。』
 と言ってみたところで、これまでの経験からバレるのも時間の問題だと分かってる。
 なら
「最近、ちょっと余計なものが見え出しましてね。それでそっちに視線がいってしまうので……疲れてるんでしょうね」
 といってみた。
「おいおいおい、大丈夫か?」
 恐らく疲れからくる幻覚か何かを見てるのだと思ったのだろう。
 できればそうであって欲しいとは思ったし、今でも思いたいのは山々だが……
 こうもはっきりと、さっきから市丸が尾栗三佐の後ろで声を殺して笑ってるんじゃなぁ……と内心は少々疲れている。
 ただでさえ、当直時の出来事が未だに信じられないのに、もう何がなんだか自分にはサッパリだよ……
 と考えを放棄しそうになる。
「航海長。今、あなたの後ろに人がいて、声を殺して笑ってるなんて言っても、信じてもらえないでしょうね」
 そう言った瞬間、尾栗三佐の顔が引きつった。
「お……お前もしかして……」
「そうです、そのもしかして、です」
 言葉にはしなかったが、三佐が何を言いたいのかよく分かる。
 自衛隊にはよくある話だし、よく耳にするこの手の噂。
 見たなんて人は沢山いるし、悪ければ……なんてこともよく耳にする。
 大抵は噂で済んでるし、実際経験したことはない人も沢山いる。
 だが今は別だった。
 こうもはっきりと市丸の笑い声が聞こえるんじゃ、信じざるを得ないだろうな……
 と思う。

 
「で、お前どうするんだ?」
「どうもこうも、上陸したら一度お祓いしてきますよ。ま、自称死神に効果があるかどうかは知りませんがね」
 というと
「死神?!」
 と、三佐が叫んだ。
 そりゃ、そうだろう……な。
「おいおい。お前そんなのにとり憑かれてんのか?」
 と言いながら、恐る恐る後ろを見る尾栗三佐の様子に、耐え切れなくなったのか市丸が、大爆笑してる……

「だぁぁぁもう! ちょっとは黙れ市丸! 煩いんだよさっきから、出てけ!」
 とうとうの堪忍袋の緒が切れた。
 そう言って彼を無理矢理廊下に押し出すとは乱暴にドアを閉めた。
「ふう……」
 と大きく息を吐くと、尾栗に向きなおす。
「とまぁ、こんな感じです。俺以外に姿・声が聞こえないのはいいんですが、こうも煩いんじゃ考え物ですよ。ホント」
 驚いたのだろう。
 びっくりした表情のまま固まっている尾栗にが言う。
「三日前、ハワイからの出港初日にいきなり現れましてね。驚きましたよ。銀髪だからアメリカ人かもと思ったのですが、喋ってる言葉は日本語だし、自分のことを死神だと言うし……でって三佐?」
 ドアの方に視線を向けたままの尾栗に、が声を掛ける。
 そこには、ドアをすり抜けてまた入ってこようとしている市丸の姿がそこにあった。
 ま……さ……か?
「うわぁぁぁぁ!!! 出たぁぁぁ!」
 今度は、尾栗の叫びが廊下に響き渡った。

 
 
 
 
 
「どうした!」
 慌てて入ってきたのは、一直を終えた菊池三佐だった。
「雅行! そこから動くな! 今お前の前に死神がいる!」
 そう叫んだ尾栗三佐だったが、当然菊池三佐には見えてない。
「はぁ?」
 怪訝な顔をするのは当たり前だった。
「尾……尾栗、お前大丈夫か?」
 後ろから今日は非番だった副長が顔を出す。
 やはりこちらも見えていない。
「結界張ったから、そのドアよりこっちはボクの姿見えるようにしたんや」
 と、市丸が言った。
「うわ! こら雅行、入ってくるな! 洋介、雅行止めろ!」
 言うが、それで止まるような菊池三佐じゃないことくらい、この場にいる全員が分かってる。
 入るなり……
「誰だ貴様!?」
 と市丸に向けて、警戒心露に菊池三佐が言った。
 ドアの向こうで怪訝な顔をしている副長が
「なぁ尾栗。これは俺も入ったほうがいいのか?」
 と、冷静に尾栗三佐に問う。
「俺が知るか! 見たかったらお前も来い!」
 その言葉に副長が一歩足を踏み入れた。

 
 
「で、何がどうなっているんだ?」
 と、状況を見て副長が言う。
「お前、本当に幽霊なのか?」
 と尾栗三佐が市丸に問う。
「せやで? これでも死神や」
 と、悪びれずに市丸が答える。
 ベッドに座る以下、副長、航海長、砲雷長・そして市丸という……艦の幹部と自称死神の組み合わせが一つの部屋にいる。
 なんとも異様な光景だろうか。
 しかも、ベッドに座っているの隣に市丸がくっついて離れないから余計に空気が重くなっているのを知ってか知らずか、市丸が更に火に油を注ぐ。
 の腰に手を回したのだ。
 それには流石には抵抗した。
 スッと体をずらして逃れる。
「いいやんか、減るもんじゃなし……」
 と市丸が言うが、は無視を決め込んだ。
「で、市丸とやら、説明してもらおうか。お前はなんでこの艦に乗ってて、どうしてにつきまとう?」
 と冷静に聞いたのは角松副長だった。
 そして、それに市丸が答える。

「ん? ボクな、サンを死神にしたいんや」
 と……

アトガキ
三日目 昼というか、午前と昼の間の話です。まぁ、確かに副長以下、佐官・そして分隊長と一つの部屋にいたら確かにそれは異様な光景でしょうね……
さーて、やっぱり三羽〜出しました。
といより、彼らがいなきゃ「ジパング」じゃないと、私は思ってますから。
それにしても栗、慌てすぎ……

しかし、やっぱりアニメジパングの菊池は……もう!ナイスミドルというよりカッコよすぎです。
改めて惚れ直しましたよ。えぇ。
特に『1対40』や『警告』で眼鏡を取るシーンなんか、もう〜〜
格好いい!それだけです。そして極めつけはもう……ね。
いや〜〜菊池……あんた最高です。

2017/07/19 書式修正
2017/08/05 DreamScript交換
2017/08/06 加筆・改訂
管理人 芥屋 芥