SuperStrings Alchemist
41.to Answer
化け物だ・・・
話を聞いて、純粋に、そう、思った。
自分なら、きっと、耐えられない。
きっと、いや、多分、そんな繰り返す人生なんて、自分は耐えられない。
すでに『明日』を知っている人生なんて、きっと、無理だ。
それを何十回・・・いや、今までに何百回と続けてきたのか?この少佐は。
今のこ瞬間も、それが続いているなら、過去の時間が、彼の中に戻っていっているんだろうか。
いや、きっと、戻りつづけているんだろう。
今でも、過去の『今の年齢の記憶の全て』が、きっと、戻ってる。
こんな・・・
と、の話を聞いて、エドが考えていたところに、声が、響いた。
「そのために、選ばれた・・・の?」 と。
「そんな・・・馬鹿なことって・・・」
中尉の話を聞いて、信じられないという風に答えたのはではなく、イズミ。
そして、それを否定するように答えたのは、少佐だった。
「中尉の指摘は、当たってるかもしれない」
と。
「もし、そのための材料としてこの街が候補に上がったのなら、この街は最適な場所となる。
人が多く、また、発展しているために街に流れ込む力も多い」
『そして、残る力も、多い』
空間に、の言葉に付け加えるようにして声が響く。
「人が多いと、流れ込む力も、余る力も多くなる。
結果として、発展する理由にはなるけれど、その分内包する力が多くなれば・・・」
『解放したときに、一つ一つの『物』が残す力が多くなるって寸法さ。
。
お前、もしかして、まんまと嵌められたんじゃねぇの?』
が今まで、あえて言わなかったことを、『声』が突く。
思いかげないところから突いてきた言葉に、の目が僅かに見開く。
あえて言わなかったこと。
それは、あの男のこと。
この『事件』の裏で見え隠れしていた、あの男のことだ。
だが今ここでソレを言ってしまえば、大佐を敵に回すことに・・・
「私のことなら気にするな。
もう、既に、大体のことに見当はついている。
でなければ、私は今ここで、黙って話を聞いてはいない」
「大佐?」
声に答えるようにして、しかし実際はに向けて発した言葉に問い掛けたのはエドワードだ。
しかし、大佐はそれを流して、更に、続ける。
「その女性を追うか否かで、道は既に分かれていた。
まぁ、直前には気付いたがね。
しかし、あえて私は今ここにいる。ということは・・・分かるな?」
つまり、答えを聞いても、敵には回らないということ。
「大佐・・・本気ですか?」
後戻りは出来ない。
しかし、確かに目の前には大佐が立っている。
もし失敗すれば、降格どころの話ではなくなる。
その意味を込めて、がロイに問う。
それを一笑に付して、ロイは答えた。
「本気でなければ、ここには居ないぞ」
「う・・・嘘だ!」
次に告げられた言葉に、拒否の言葉を言ったのは弟のアルの方だ。
「嘘じゃない」
「だって・・・そんなこと・・・」
「驚くのも無理はないかもしれないが、これと似たようなことを、軍は以前にも行っている。
まぁ、今回の犯人はアイツだが、しかし、大量殺戮という点においては、同じことだ」
大佐が、補足するように説明する。
「嘘だ・・・そんな・・・だって・・・」
「同じ時代にこれほど力が流れ込んでくるのは、久しぶりだよ。
ということは、向こうは俺のことを何かしら知っている。
壊変時期に、これほどまで明確に合わせてきてるということは、向こうに国家錬金術師並の頭を持った人間なり、誰かなりが付いたという、そう判断もできる。
今まで、この壊変時期を明確にここまで当てられたことはなかったから、間違いないと思うよ」
「ちょ・・・っと質問いいかな?少佐。
さっきから出てる。『壊変』って、何?」
そう質問をぶつけてきたのは、エドワード。
「あぁ。
壊変は、俺が一度壊れるってこと。
というか、う〜ん・・・っと、崩れるっていうか、なんていうか・・・
力を一度解放して、それを小さくしてから、また吸収する作業のこと。
・・・あまり上手く説明できないけど、一度壊して、自分で作って、そして『生きる』・・・っていうか、存在するための、一つの方法」
一度壊す?
そして、それを自分で作る?
「記憶の整理は、その時に一緒にやってしまうんだ。
もう、ある程度慣れてるから、今は平気になっちゃったけど、慣れるまではこれでも、大変だったんだよ」
何てことないように、さんが言う。
その顔は、僕には、疲れきっているようにも、見えて、なんだか、苦しい。
「さんは・・・辛くないんですか?」
その質問をしたらその場に、沈黙が降りた。
そして、しばらくしてようやくさんが答えてくれたけれど、やっぱり、その表情は、言葉とは裏腹に、辛そうだった。
「もう、慣れたから・・・」
壊変作業は、話したような、そんな単純な作業じゃない。
だけど、答えとしては、それが一番納得できる答えなのかもしれない・・・と、エドワードに答えていて、は思う。
それに、初期段階の作業は、既に扉の中で行った。
後は一発、ソレを叩いてやれば、一気に崩壊と形成は始まっていく。
だが、今はそれは出来ない。
自分の所為でこの街が死の街になってしまったから。
それがなければ、いつも通りの行程でやっていたことを、わざわざ引き伸ばしたのは、お前達が引き止めたからだ。
この街が選ばれたのは、単なる偶然だろう。
しかし、自分が居た所為で、こうなったのなら、やはり、その責任は取らなければならないと、は思う。
あの時に充てられた人間たちを除いて、ここまで明確で挑発的な挑戦状を叩き付けてきた組織は、今までいなかった。
ここまで、外枠を埋められたことは、今までになかった。
誘っているのだ。
あの男は。
この自分を。
ならば、答えてやろう。
アトガキ
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管理人 芥屋 芥