SuperStrings Alchemist
38.Questions
「・・・本当だよ」
が放ったその言葉を、エドは直ぐには信じられなかった。
ずっと探してきたんだ。
ずっと追ってきたんだ。
その伝説を。
その真実(ほんとう)を。
なのに、今、アッサリと目の前にソレがある(居る)・・・だって?
「う・・・うそだ・・・」
「嘘じゃない」
「嘘だよね、さん」
エドとアルが驚きを隠さずに、再度問う。
だけど、返ってくる返事は肯定だけで、彼らの望む否定の言葉は返ってこない。
「本当のことだよ、エドワード兄弟」
そして、エドはあることに気付く。
もしかして・・・
「・・・もしかして・・・ここにいる全員・・・知ってたの?」
師匠も、大佐も、中尉も・・・皆?
知らなかったのは自分達だけ?
その問いに答えたのは、横になっていたはずのイズミ。
「そこの大佐はどうか知らないけれど、少なくとも私は・・・随分前から知っていたわ。
 それこそ、私があの子を取り戻そうとしたときに現れたから、10年以上前になるのかしら」
「師匠?」
「そんなに・・・なりますっけ?」
エドとが、それぞれ違うことを同時に言う。
そして彼女は、に対して答えた。
「まだあんたが今のエドやアルの年の頃よ。覚えてない?
 あんた、記憶の整理はちゃんとしてる?」
記憶の整理?
「あ・・・はい。
 それは何とか、一応時代ごとに分類分けしてますから、大丈夫ですけど・・・」
時代・・・ごと?
時代ごとって、どういう意味だ?
「あんた・・・一体何者だ」
エドワードの意思の強い瞳が、睨みつけるようにを見る。
「何者って言われてもね・・・
 自分でもよく分からない。
 ただ、気がつけばここにいて、あの光景を見た。
 それが、ここに来た時の最初の記憶」
静かに語り始めた。
「この体が最初に見た光景は、死体の山だ。
 王宮らしき建物は崩れる寸前で、その真ん中に俺が立っていた。
 荒廃に陥った国で、僅かに残った人たちも、残留した力に充てられて・・・」
「ちょ・・・ちょっと待って!」
少し、昔を思い出しながら語り始めたの言葉を、エドが止める。
「何?」
顔をエドに向けて、止めたエドにが聞く。
「今まででの話の中で、疑問がいくつかあるんだけど、聞いていい?」
「どうぞ」
「じゃ・・・二つ。
 あんた、さっき『この体』って言ったけど・・・もしかして、『体』と『魂』は・・・その・・・アルみたいに『バラバラ』なのか?
 それと、『残留した力』って何?
 体は蘇ったけど、その体の魂までは蘇らせることができなかった・・・けど、余ったってどういうこと?」
立て続けに疑問に思ったことを口にするエドに、が僅かに目を見開いて驚く。
「一つ目の答えは、全くその通り。
 ただし、俺の場合はこの体が『生きてる』こと。
 そして、二つ目の疑問については、そうだなぁ・・・物を造るときに、どんな力の流れができる?」
問い返されて、逆にエドは困った。
「え?」
「例えば、鉄から包丁を造るとき。
 例えば、木からいろいろな加工品を錬金術で造るときに、君はどんな力で以って、それを造る?」
「それは・・・こう・・・手を当てて・・・循環させて・・・」
そう。
真理を覗き見た自分に与えられた、やり方。
「その時に、余る力の存在を君は感じたことがある?」
「余る?」
「造るときに引っ張ってきた力より、使った力の方が遥かに小さいと、感じたことはない?」
「いや・・・俺は・・・そこまで・・・」
そこまで深く入り込めない。
あの力は、本当に・・・
「なるほど。
 じゃ、少しだけ」
そう言うと、がエドの手を取り、少しだけ強く握ると目を、閉じた。
?」
ロイが驚いて名前を呼ぶが、はその声に軽く頷いただけで『大丈夫だ』と、返事を返した。
「じゃ、君が物を練成する時に引っ張ってくる力を、少しだけ見せるから、いつも通りにやってみて」
というと、バチバチッと手から花火が散った。
そして、エドは見てしまう。
例え小さな物を造るにしても、そこに流れてくる大量の!
「うわぁ!」
驚いて手が離れた瞬間、ソレは、見えなくなる。
「あ・・・あ・・・」
「ガラス玉、完成」
が造ったのは、小さな、本当に小さなガラス玉。
だけど、それを造るために流れてきたあの大量『何か』から、たったあれだけしか出来なかったのか?
「このガラス玉を作るのにさっき流れてきたエネルギーを仮に十とするなら、このガラス玉はせいぜい2の力くらいしか使われていない。
 それが通常の錬金術師達が使えるエネルギーの割合。
 そして、俺が同じエネルギーを使うとすると・・・」
といって、は胸の前で手を合わせ、ソレを、行った。



「嘘・・・」
出来上がったのは、さっきのガラス玉とは比べ物にならない程大きな・・・ガラスのテーブルだった。
「嘘だ・・・だって、俺がやったときは!」
「解放率の差だ」
この時、初めてロイが話に割り込んできた。
「大佐?」
「同等に引っ張ってきた同じ力でも、鋼のととでは、その使える割合が違う・・・そうだな?」
確認するようにに顔を向けてロイが問うが、その声は確信していた。
「えぇ。
 もし、君があのエネルギーの中から二割を取り出せるなら、俺は少なくとも八割は取り出せる・・・そういうことだよ」
「すなわち、の手に掛れば、少ないエネルギーでも効率よく物が造れたり動かしたりすることが出来る・・・ということになるのかね?」
「少し違いますが、似たようなものでしょうね」
「ちょ・・・ちょっと待てよ。
 じゃぁ、最初の質問に戻るけど、『残留した力』って・・・まさか・・・」
話から、結論はどう考えてもソレしかない。
「そう。
 さっき君が引っ張ってきた力から、物を造るのに使ったエネルギーを引いた力が、時間の中に巻きついたものだよ」
アトガキ
布石をそろそろ回収していかねば・・・2
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管理人 芥屋 芥