SuperStrings Alchemist
24.Shape in a map
『完全なものは作れないのか!』
誰かの怒鳴り声が響いている。
そして、それを必死になって止めようとしているもう一人の声。
『駄目です教授!
 引き込まれますよ!!』
『離せ、  君!この研究に儂が何十年費やしたと思っておる!』
『それでも駄目です。こんな中途半・・・』
そこで、止めようと声を張り上げていた男の声が止まる。

――対価を・・・
何?
――この国全員の命を費やしても構わん!この子を蘇生させてくれ!
何を言ってる!
死んだ者は戻ってこない!
それにこっちはそんなことに構ってられないんだ!
そう思った時だった。
目の前に無数の腕が伸びてきたのは。
そして
『お前でいい。
 モラッテイクゾ』
そう言うと、その中へと引きずり込まれた。





「うーん・・・」
追いかけても追いかけても、少佐は一向に掴まる気配がない。
むしろ警察も軍も裏を斯かれていて、手が出せない。
完全に後手に回る。
そして、いつの間にかヒトが死んでいる。
『毎日がこんな状態じゃ、葬儀屋が大儲けだな』
と、どこかの軍人がそう嘆いていていたのを、エドは思い出した。
死者が続き、葬儀屋が追いつかない。
今日もどこかで墓が立つ。
野ざらしになったモノは、共同墓地へと埋葬され、なんとかなっているが・・・
それも時間の問題だった。
「どうしてこんな・・・」
街をうろつく人間は日に日に減り、今では閑散を通り越してまるでゴーストタウンと化している。
この街に来た頃のあの賑やかさど、欠片もない。
「ねぇ兄さん。
 やっぱり大佐に言った方が・・・それに、師匠にも・・・」
さっきからテーブルに、地図広げて何か書いてる兄にそう言ってみるけど、返事はない。
「兄さん、三人で共同で探せば、きっと見つかるよ。」
「駄目だ」
「兄さん!」
「アル、あの大佐の調べたところ。そして、師匠が調べたところ、地図に印つけてみた。
 なぁ、何か見えてこないか?」
と、アルにテーブルを見るように言う。
ガシャ・・・という鋼の音をさせてアルがテーブルを覗き込むとそこには兄がつけたのだろう印が大量についていて・・・
「兄さん。これ・・・」
と驚いてみるが、実際は
「何?」
と、兄が指す言葉の意味が理解できなかった。
「あのなぁ。これ、母さんを造ったときのあの!・・・って、そうか。
 アルはあの時のこと、覚えてないんだっけ・・・」
分からなかったのは、弟に記憶が無いからだと思い直したエドが、説明する。
「この文様、今はそうハッキリとは姿を表してないけど、これ、あの時見た門の文様にそっくりなんだ」
そう。
大佐が調べたところ、そして師匠が調べたところは、実際は殺人が起こった場所だ。
そして、その二人と自分が調べた場所を重ねて地図に印をつけると、ぼんやりとだが浮かんでくる、あの忘れられない体験をした、門の模様。
「だけど、そんな事分かったって、事前に防げなかったら意味がないじゃないか。」
アルが最もな意見を言う。
「だから、三人で調べようって言って・・・って、兄さん?」
「先回りする」
そう言うと、黒の上着を取り部屋を出る兄に慌ててアルが付いて行く。
「兄さん!」



「テ・・・メェ・・・」
男が、擦れた声を上げる。
それを見て、制服姿の男がニヤリと笑い、そして・・・
「運が悪かったね。じゃ、バイバイ」
と言いながら、銃を撃った。
建物の影。
表通りからは見えない場所。
集団で警護をしてた時だった。
『誰か』一人が、言ったんだ。
――あっちも見てみよう。
って。
そしたら、次々に人が消えていった。
まるで、暗闇に引き込まれるように。
気がつけば一人になっていた。
そして、気がつけば、目の前に居た、あのすっかり顔の見慣れた・・・あの・・・少佐。
「ヒィッ!」
と男は息を飲んだ叫び声を上げて、更に暗闇へと走っていく。
その様子を見て少佐が笑いながら言った。
「あーあ。じゃ、鬼ごっこの始まりだねぇ。
 ねぇ、君がそのまま逃げ切れたら、君だけは許してあげるよ。
 ま、あんたみたいなオヤジ、残しておいても意味ないけどね。」
と。
=。このクソッタレ少佐!
 なんだってテメェは、いきなりこんなことをヤラカシタ!?
 答えやがれこのクソ!」
と逃げながらも、男が声を発する。
「さぁ。なんでもいいじゃん。そんなことは。
 さてオジサン。僕、待つの疲れたから・・・」
その声は、遠くから聞こえてきたのに・・・
どうして・・・
「ハイ、つかまえた。」
と、まるで語尾にハートマークか何かが飛んでそうな、そんなウキウキとした声が目の前で突然響く。
「テ・・・メェ・・・どうして・・・」
さっきまで全力で逃げていたはずなのに。
さっきまでコイツの声は遠くから聞こえてきたハズなのに・・・
「どうしてって。だって僕、錬金術師だし。
 こんなことは朝飯前」
そう言って、銃を構える。
そして・・・
 
 
 
 
 
 
ガァァァン!
近くで銃声が響く。
その音に反応した二人の足が止まる。
「銃声?」
「兄さん、この銃声近いよ。」
「急ごうアル!」
さっきよりも急いで、音がした方へと足を向けた。
 
 
 
 
 
 
「チッ・・・のヤツ・・・よくも邪魔してくれたな」
と、目の前の壁に向かって悪態を付く。
そして、誰かが近づいてくる気配を感じると、また、闇へと消えていった。
アトガキ
ふう。主人公,影だけ登場
2023/07/07 CSS書式修正
2007/05/26 初校up
管理人 芥屋 芥