SuperStrings Alchemist
20.Nonsense Murder
ザシュッ・・・
バシュゥ!
「や・・・止めてくれ!俺たちが何をした!!」
足がもがれ、手がちぎられた男の怯えた声が闇に響く。
「何も。何もしてないさ。」
そうは言うが、目の前の相手は薄気味悪い笑みを浮かべるばかり。
「なぁ。お前一体どうしたんだ。今まであんなに・・・」
そう言った男の脳裏によぎる、彼の笑顔。
『親父さん、このパンすごく美味しいよ』
そう言って、本当に美味そうに食べた笑顔がよぎる。
「今まで?あぁ。そんなこと知らないよ。さぁて、つまらなくなってきたから、もう殺すよ」
そう言って、銃を取り出して撃った。
 
果たしてこれで何人目だろう。
いや、もう何人目かなんて覚えてない。
兎に角、血の道を作るだけ。
魂を集めるんだ。
ただそれだけ。
そのための、お前等は『贄』だ。
さぁ、死んでもらう。
「いたぞ!」
その声とともに足音が聞こえる。
軍か。でも丁度いい。
ついでに死んでもらう!
ドシュッドシュッドシュ!
来たのは三人。
そして、彼の足元には四つの死体。
今日これで、果たして何人殺しただろう。
いや、何人死んだかなんて意味がない。
まだだ。
まだ、足りないんだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
「うーむ」
と、机の上に広げた地図を見てそう言って腕組みをするのは、ロイ=マスタング大佐。
「どうですか大佐。」
そう聞くのはリザ=ホークアイ中尉だ。
「わからん。しかし、『アレ』はではない。別の誰かだ。」
ギシッと椅子をならして考え込む。
その姿に小さく息を吐くと、リザは何か飲み物を作りに給湯室へ入った。
「何か音がしたぞ」
そう言って闇を走った三人の後を追って、路地の角を曲がった時に足が止まった。
今行けば、鉢合わせ・・・
そして、一瞬遅れてその場に立ったときに去る彼の後姿が暗闇にはっきりと映った。
その後姿はまぎれもなく
だが・・・
違う!と、彼は心のどこかで確信した。
だからこうして地図を広げ、この猟奇的な殺人に何か・・・意味がないかを探っている。
何の意味もなく行われているとしたら、それは間違いなく狂気の沙汰だ。
しかし仮にこの殺人をが行っていると仮定して、今までギリギリのところで止まっていた人間が、急に何の意味もなく殺人を行うだろうか。
一体何が起こっている。
中央からの命令。
出られない街の住人。
閉じた街で行われる、『彼』が行う殺人。
そこに意味はあるのだろうか。
意味があるとしたら、一体何だ?
「どうぞ」
「あ・・・すまん」
スッと差し出された珈琲に手を伸ばす。
そういえば、鋼のもどうやらこの殺人がとは別の誰かが行っていることに気付いていたな。
果たして向こうは何を掴んだか・・・
気になるところだが、断ったのは自分だ。
向こうは向こうで調べているだろう。
珈琲を飲んで一息つけると、また地図を彼は仇か何かのように睨む。
しかし、いくら睨みつけても地図は返答をよこさなかった。
そして今日もまた、新たな犠牲者が出る羽目になる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「まただ。これで何人目だ」
死体があったそばに立っているのは、金糸の髪に黒い服。
そして、その隣には甲冑を着た男。
「兄さん・・・」
もう、『何人目』かなんて、数え切れない。
最初は軍の玄関前。
次に中央に出る駅の前。
移動していっている。
そこに何かを見出そうとするものの、やはりまだ全体は見えてこなかった。
何がある?
一体・・・何が・・・
焦りだけが、募る。
彼等は知らない。
その探している『彼』が、色々な姿に為れることを。
だから、裏をかけるのだ・・・ということを。
軍人の振りをして後ろから襲えば、簡単だということを。
そして、今この現場に、『彼』が居るということを。
(まぁ。せいぜい探すことだね)
などと思いながら、また新たな犠牲者を求めて、『彼』はその場をスッと去った。
 
 
 
 
 
 
 
「まだ・・・だ」
中央に居る彼は、その報告を心待ちにしていた。
南方司令部のある街で、=少佐によると思われる猟奇殺人。
一向に捕まる気配なく、軍の人員も殺され、人手が回らず。
よって、正式に出動を要請したし。
総統室で、一人ニヤリと笑うはここの主。
そして、計画の指導者でもあるこの男。
キング=ブラッドレイ総統その人である。
その表情は狂気を含ませて、笑っていた。
「まだ足りんよ。まだだ。」
 
 
 
 
 
 
 
街は閑散としている。
店は閉じ、街を歩く人間も少ない。
しかし殺人は減らない。
何故か家の中でも行われる、一家全員の死。
昨日は一つのアパート全員の死・・・まであった。
はっきり言って、この街は異常な空気に包まれていた。
そんな中、一組の男女が街中を歩く。
「こうも道行く人が少ないんじゃ、目立つかしら」
女が周りを見渡して、率直な感想を言う。
それに男が「あぁ・・・」と言って同意する。
「行きましょう。」
女が、目的があるのかしっかりとした足取りで、そこへと足を向ける。
「あぁ・・・そうだな」
そう言いながら、二人が向かったのは路地裏。
闇に支配された、光の届かない半地下になっている路地。
そこに、二人が立っていた。
(居る)
辺りを見回して、女が確信する。
「居るんでしょう?出てきて」
その呼びかけに、闇が震える。
しかし、まだ姿を現さない。
「出てこないと、『光』を打つわよ」
そう言うと女が胸の前手を合わせる。
途端ザワつき始める闇に、小さく女が息を吐いた。
しばらく沈黙が降りる。
やがて闇の向こうから声が届いた。
『止めてくれお嬢さん。儂らは光に弱い。直接打ち込まれたのでは、こちらもたまらない。』
声自体は老人のそれ。
返ってきた返答に、女が少しニヤリと笑って話を切り出した。
「話したいことがあるのよ。について」
その言葉に、闇自体が小さく息を吐いたような、そんな気がした。
「人型、取った方がよさそうだな。」
闇がうごめく。
そして、その向こうから出てきたのは、東方で古本屋を営んでいたあの老人だった。
アトガキ
ふう・・・
まだまだ進みません。ごめんなさい。
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管理人 芥屋 芥