いけるか?。・・・・
SuperStrings Alchemist
12.theBullet
「信じられるか?」
ロイ・マスタングは静かに問うた。
その問に答えるのは・・・同じく話を聞いたリザ・ホークアイ中尉
「信じられなくても、私は・・・信じざるを得ません。何故ならこの新聞が全てを物語っているからです。大佐」
「事実・・・か」
苦々しくそういうロイに対して、リザは
「はい。」
と、静かにそう答えるしかできなかった。
 
 

 
 
 
「では、少佐。南方までお気をつけて。」
「すまんなハボック。駅まで見送らせて」
すまなさそうに言うに、ハボックが慌てて否定する。
「いえいえ。これも仕事の内っすから。ホントは大佐も来ることになってたんですがね。どうも外せない用事があったみたいで。それじゃ、お気をつけて。」
敬礼をして見送るハボックに、敬礼で返す。
マスタング大佐がこないには、理由があるんだよ。
そう思っていても口には出さない。
「それじゃ」
「はい」

 
 
 
南方への汽車の車内。
徐々に暑くなっていく太陽に、少しだけ視線を向ける。
冬とは言え、南は暑い。
列車の窓に手をかけて、はいつの間にか、眠りについてしまっていた。

 
 
 
 
 
「起きてください。もう、着いてますよ?」
駅員に起こされ、慌てて起きる。
随分昔の夢を見たような気がするが、起きてしまえば、内容など忘れてしまっていた。
「あ・・・すみません。」
恥ずかしいやらなんやら、複雑な気持ちで謝るとは急いで列車を降りた。
途端やはり暑い熱気に、思わず着ていたコートを仰ぐ。
「戻ってきたんだな」
書類を届けるだけだったというのに、こんなにも長い時間東方に留まるはめになってしまうとは、行く前からは全然予想してなかったし・・・
なにより、予定外の行動を取り過ぎたことも、反省の要素だ。
関わらせては、ダメだったはずなのに・・・
どこかで、彼等に関わってもらいたいとでも思っているのだろうか。
そう。
彼等に会ってからだ。
金色の瞳を持つ、『彼ら』・・・エルリック兄弟に
賢者の石を求める彼等に、全てを話してしまいたいと、いい加減疲れていると・・・
そう言えたら、どんなに楽か。

 
少佐。お迎えに上がりました。」
定時に来た車に乗って、南方司令部を目指す。
「随分お疲れのようですね、少佐」
傾く夕日に頬を染めて外を見るに、迎えに来た少尉が声を掛けた。
「そりゃ、一日列車に乗ってれば疲れもするさ。早く帰ってシャワーでも浴びたいね」
冗談まじりにそういうと、少尉が
「それじゃ、急がな・・・」
バシッ!
その瞬間、一瞬、は、何が起こったか想像つかなかった。
運転する少尉の首が、飛んだ
途端蛇行する車からその次にが取った行動、それは・・・
ドンッ!!
狙撃手に向けて、銃を撃った。
そして、彼は不安定な体制の中、首が飛んだ少尉の体を押し退けて、ハンドルを握り、そのまま走っていった。

 
 
 
 
 
「すまない・・・」
ただ、ひたすらに謝るしかなかった。
自分の昔のことで、こんなにも今の人間を巻き込んでしまっている。
その上で、自分だけ楽になろうだなんて、虫が良すぎるだろう?!
「うちの人、返して!返してよぉ!!」
いくら罵倒されても、死んだ人間は元には戻らない。
それが自然の摂理であり、理で、真理だ、
なら・・・
ならば、一体俺はなんなのだ?
あの、今は『ストック』と己が言っているあの光る球体の形をした、『命』の山は・・・

 
人の姿をした、人に非ざる人・・・だ。
おまえのようなものを私は望んではいなかった!将軍、片付けろ!!
あなたやめて!その子は、私たちの子供よ!
くたばれこの化け物!

 
 
「しばらく、自宅謹慎だ。少佐」
「了解いたしました」
狙っている彼等は、もう既に近くまできている。
ほら、手に届くところまで。
さっきの弾道、少しずれていれば、首が飛んでいたのは、間違いなく俺だったはず。
あれは、単に彼等の警告。
さっさと死ねと、俺に告げているのだ。
そうして、恐らく俺の中から出てくる『モノ』を奪いたいと、そう考えている。
ある意味、ラストたち人造人間よりも性質が悪い。
なまじ「人」だから、自分の欲を良く分かっている。

 
「出てきてください。いるんでしょ?」
自然な形で、人気の無い裏路地に入り込んだところでの口が開く。
「相変わらず転移弾を持ってるのか・・・貴様は」
影が、声を発した。
いや、正確には影に潜んでいた一人の男の声だったのだが、その姿はあまりにも異様だった。
腹が、半分以上ごっそりないのだ。
お陰で、みたくもない内臓がそこから垂れ下がっていて、見るものの目を背けさせる姿だった。
「なまじあなたが避けるから、そんなことになるんです。どうせなら、全部『持っていかれれば』良かったのに・・・」
「貴様を殺すまでは、絶対に死ねん。貴様に『喰われる』なんざ、願い下げだ。」
「そうですか。ですが、転移弾で『持っていかれた』体は、例えあなた達であろうと二度と再生しない。そのことはご存知のはずでしょう?」
「フン。そんなことは百も承知よ。しかもこの傷は致命傷だ。だが、これじゃまだ足りない。出来そこないでも、この傷じゃ俺たちは死ねないんだ。しかも傷みや苦痛だけはありやがる!わかるか?!お前に!」
「大きな声、出さないで下さい。死期を早めます」
「構わない。殺せ、殺すなら!だが、俺もただではやられん。お前を道連れにしてやる!」
長い時間に、人の命以上の時間を生きてきた彼らには、もう、何が本当のことか、わからなくなってしまっていた。
最初は、家族や兄弟を、彼に奪われた憎しみだけが、彼等を一つにし、やがてそれが徐々に狂気の集団へと変わっていく。
そして、今じゃ統制すら取れていない、狂気の集団
そんな彼等を探すためには名前を捨て、経歴を買って、軍に入った。

 
 
 
黙って、静かには銃を構えると、一瞬目を閉じて・・・
引き金を、引いた。

アトガキ
・・・ふう・・・やっぱり謎・・・
2023/07/06 加筆書式修正
管理人 芥屋 芥